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滅多な事が無い限り、出てこない。
そんな彼から古事記を習ったら、凄く、細かく教えてくれそうだが。
迥の方が、面白い教え方をしてくれるのを、男性は知っている。
この、荒野地帯が、まさか。
イザナミノミコトが、棲んでいる場所なんて。
畏れ多い感じがしてきた。
『イザナギノミコトは、有名だね。左目から、天照大神。右目から、月読尊。鼻から、須佐之男尊…』
須佐之男尊なら、黄泉の國の上に、住居構えているから解る。
祖母様曰く『毛がモジャモジャ』らしい。
僕も、一度は、拝見するべきなんだろう…。
芸術心が欠けている従弟に描かせると、日本画より、酷い結果になる。
あれが、絵心も無いと、言うんだ。
彼は、昔に見せられた須佐之男尊の絵を今だに、覚えていた。従弟が描いた自画像は、何というか、絵事態に、失礼な気がした。
「当の本人が見たら、怒るだろうなぁ。幾ら、豪快な方と言えど…三柱の一人だし」
そんな事を思いながら、漆津夜は、地面に刺さったハート型のチョコレートを、手で撫でた。
黄泉の國を統一している楠野帝の者が、此処まで芸術に長けているのは、素晴らしい事だが、何故、敢えてのハート型なのだろう。
下界では、二月にチョコレートを渡す習慣が、あるらしい。
無論、天界でも取り得てるし。
聖霊界や冥界、魔界だって、一年に一度のイベントで、チョコレートを送っていると、聞いた。
でも…。
黄泉の國は、少し、違う気がする。
先程も、父親が言っていたが。
祖母様の感覚が、よく掴めない。
男性は、触れていた指をペロッと、舐めた。
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