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ー黄泉の國・楠野帝邸・リビング
「もぉぉぉう!!!遅いぃぃぃ」
リビングに、響き渡るのは、孫を待っている璃羅の声だった。
昨日から、来るのを楽しみにしていて、美味しい、お菓子を取り寄せたというのに。肝心の孫が来ない。
下界から黄泉の國にある楠野帝邸まで、浮遊術を使ってから、ひと飛びの筈。
それが、何故か、三時間ぐらいオーバーしているのだから、流石の璃羅も、痺れを切らした。
「何処かで…道草喰っているんじゃないんですか?」
「羅斗じゃ、あるまいし…止めてよね!」
「僕の子供に、ケチ付けないで下さい…」
「絶対に、篝に似たでしょう。羅斗の道草喰う癖」
椅子に、座っていた男性が、母親に向かい。
毒を吐く。
これは…。
楠野帝邸の定番でもある。
「確かに、篝は、道草を喰いますが。大抵は、母上が、荒野地帯に彼を放り投げるから、いけないのです!」
はっきりとした口調で、彼は言った。
「婿で、ストレス発散は、許されている範囲。それは…神羅も承知の上で、契りを交わしたんでしょう」
「そうですが。普通、鬼女の様子を見に行かせます?黄泉比良坂に、何か用事でもあるのかと…。僕、問いたいです…」
「…嫌だなぁ」
神羅の科白に、璃羅は誤魔化す。
その瞬間を逃さなかった彼は、何かあると、察知した。
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