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第32話 クリスマス
目を覚ますと、兼貞が俺を抱きしめていた。ぼんやりと瞬きをした俺に、チュッと音を立てて兼貞が口づけた。俺は一気にその音と感触で覚醒した。自然と頬が熱くなってくる。そ、そうだ。ヤってしまった……! 脱童貞……? い、いや、処女喪失? と、ぐるぐると考えていると、抱き寄せられた。そして今度は額にキスをされた。
「おはよう、絆」
「あ、ああ。おはよう……」
「あのさ」
「な、なんだ?」
いつの間にか意識を飛ばしていた俺は、ビクリとした。もしかして、何か変だっただろうか? 一気に不安に襲われる。
「足りない」
「――え?」
「もっと欲しい」
「な」
「今日は、クリスマスだろ? プレゼント、欲しいな」
「え」
どうやら俺は、長い間眠っていたらしい。薄暗いから夜かと思っていたが、もう朝みたいだ。
「絆がもっと欲しい」
真正面からじっと見つめられ、笑顔で言われて、俺は言葉に詰まった。目を見開いたまま、硬直するしかない。すると全裸のままの俺の陰茎に、兼貞が触れた。撫で上げられるとじわりと快楽が染み込んでくる。
「絆が食べたい」
「ダ、ダメだ。そ、それは……」
「ちょっとだけ。ちょっとだけ、今度は気も欲しい」
「……ちょ、ちょっとだけか?」
「うん」
「ほ、本当に? 約束だぞ?」
俺が念押しすると、微笑したまま兼貞が頷いた。だから瞳を揺らした後、俺は頷く。すると、兼貞が唇を舐めてから、起き上がった。そしてベッドの下方に向かうと、まだ解れている俺の後孔に指を二本差し入れた。昨日存分に貫かれたそこは、あっさりと兼貞の指を受け入れる。同時に、たらりと兼貞が放ったものが零れ落ちた気配がした。
「すぐ挿いりそうだな。俺も、もうガチガチ」
「っ」
「絆の寝顔見てるとやばかった。挿れるぞ」
「あ、あ!」
兼貞の硬いものが、俺の中へと進んでくる。ギュッと目を閉じ、俺は背を反らせる。押し広げられていく内壁に、兼貞の陰茎が触れる度、体がカッと熱くなっていく。そして根元まで挿入された時だった。
「貰うから」
「あ……――っ! ん! ン――!!」
全身から何かが抜けていく感覚がした。それと同時に、俺の思考に霞がかかる。直後、俺は唇を半分ほど開けて震わせながら、己の睫毛の上に涙が乗っているのを自覚した。
「あああああああ!」
そして大きな嬌声を上げていた。繋がっている個所から、ドロドロに熔けてしまいそうな――いいや、蕩けていく感覚が、確かにしたからだ。俺と兼貞の体温が完全に交わり、どちらの熱なのか分からなくなる。俺の全身を、そこから広がった熱が埋め尽くし、すぐに皮膚の内側全てを快楽が染め上げた。稲妻が走ったように頭が白く染まる。しかしその色は、どこか紅いような気がした。紅い稲妻など存在するのか、俺は知らない。
「あ、ああ、あぁ、っ、息が、息、出来な――ンあ!!」
兼貞の巨大な先端が、ぐっと俺の最奥を突き上げた。するとその箇所から、さらに酷い灼熱が込み上げ、俺の体を完全に絡めとった。舌を出し、酸素を求め、俺は必死に息をする。ダメだ、これは、ダメだ。気持ちが良すぎて死んでしまう。
「や、やぁ、兼貞。あ、あ、ああああ!」
「本当に嫌? 教えて?」
「嫌じゃない、待って、でも、ああああ、やぁ、兼貞、あ、あ、好き。兼貞、好き、好きだ。あ、あ、もっと、もっと」
俺は自分が何を口走っているのか理解できなくなった。ただ、自分が快楽に啼きながら、首を振っている事だけは分かった。
「どのくらい好き?」
「太平洋!」
「……? そ、それは、広いのか? 今度から、全宇宙なみにしてもらいたいな、俺」
「あ、あ、兼貞、兼貞! 動いて、動いて!!」
「いいよ」
「ひぁ、ゃ、あア――! 気持ち良っ、気持ち良い!! ンん――!!」
「絆の世界全部、俺にして?」
「うん、あ、わ、分かった。だから、だから、もっとして、あああ」
俺の理性は体と一緒に蕩けてしまったようだった。その後俺の頭は紅色に染めつくされ、そこから先の記憶が俺には無い。
――次に目を覚ますと、既に窓の外は薄暗くなっていた。
ハッとして起き上がると、俺の体は清められていて、ベッドサイドの椅子に座っている兼貞が見えた。
「おはよ、絆」
「お、おま、お前! ちょっとって言っただろ!?」
「うん? うん。ちょっとだけ貰ったよ。でも絆、昨日の夜もやりっぱなしで疲れてたみたいだな。睡眠欲が高まったみたいで、すぐに寝落ちした」
「本当か?」
「ああ」
「ど、どのくらい、俺は寝てたんだ?」
「三時間くらいかな」
「どのくらいシてから?」
「それも三時間くらいかな?」
「長いだろ!!」
俺は思わず真っ赤になって叫んだ。すると兼貞が楽しそうな顔で笑った。
「絆が可愛くて止まらなかった」
「……っ」
「さて、夕食にしよう。立てるか?」
俺は頷き、纏っている和服を見てから、ベッドを下りた。すると足がふらついた。慌てたように兼貞が俺の腰を抱いて支える。腰に違和感があって、膝がガクガクするのは、間違いなく明らかにヤりすぎたからだと分かる。
そのまま支えられて食堂へ向かうと、最初から人払いがなされていて、料理だけがテーブルの上にあった。丸一日以上食べていなかった俺のお腹は、すぐに鳴いた。
兼貞と二人で椅子に座り、俺は手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます。絆、腰痛かったら、クッションを持ってくるけど?」
「平気だ!」
こうして食事が始まった。
なお――食後その夜も抱き潰されたのは、冬休みの思い出したくない記憶の一つだ。また気を吸われて、俺は散々体をドロドロにされながら、様々な体位を覚え込ませられたからだ。俺は、色々な意味でノーマル路線でしか、行く予定は無いからな! アブノーマルな体位なんて望んでいないからな! じっくり兼貞に、俺はそれを伝えて教え込まなければならないだろう。一つ言える事として、兼貞は間違いなく、ソフトかもしれないが、Sっ気があるに違いない。
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