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第37話 打ち合わせ

 次にシュトルフと会うのは、打ち合わせの時だと、俺は戻った自室で考えた。  何の打ち合わせかというと、今度は若年層貴族への婚約報告の夜会があるので、その招待客についてである。名目上は友人への報告だが、貴族のみ参加で、過去に関わりが無かった者も招かれる。将来的な人脈作りのような夜会だ。貴族は名目が出来ると、それを理由に夜会を行いがちだが、今回は降嫁して王族から貴族になる俺への配慮も多分に含まれているのだと思う。  シュトルフは俺の隣に立つのに相応しい身分になるようにと前に話していたが、逆に俺だって公爵の配偶者として相応しくなるべく心がけなければならない。 「頑張るぞ!」  一人気合いを入れ直し、この日は早めに俺は休んだ。  ――三日後の昼過ぎ、シュトルフが王宮の俺の部屋を訪れた。簡単なリストは、俺が宰相閣下から受け取っていた。侍女達が紅茶を入れてくれたのを見て、俺はふとバルテル侯爵家でのデニスとのやり取りを思い出した。あれ以来、ポケットには常に魔法薬の小瓶を忍ばせている。今日はただの打ち合わせのはずであるが、俺はお手洗いに立つ素振りで一度席を外し、さらっと飲んでみた。だ、だってな? シュトルフのために出来る事をしたいではないか。うんうん!  そして戻ってから、俺は人払いをした。 「誰か極秘裏に呼びたい相手でもいるのか?」  それが済むと、シュトルフが首を傾げた。俺は窓の外を見て、本日の天気を確認する素振りに努める。 「別に。ただその、お前と二人きりになりたかっただけだ」 「っ」 「悪いか?」 「いや……そうか」  シュトルフの反応が怖くてチラリと見れば、そこにはどこか嬉しそうにも見える苦笑があった。 「俺もクラウスと二人で話がしたかった」 「そ、そうか」  同じ気持ちだというのが、とても嬉しい。  こうして俺達は、紅茶を飲みながら、招待客の打ち合わせをした。多くはお互いの王立学園時代の同級生や先輩と後輩となる。在学中から夜会に出ている者も、決して少なくはない。 「――こんな所か」  約二時間ほどかけて、俺達は招待客の選定を終えた。シュトルフの言葉に頷きつつ、ひと仕事終えた気分で、俺はホッと息をつく。 「ではそろそろ俺はお暇する」 「え、もう帰るのか? 忙しいのか?」  思わず俺が顔を上げると、シュトルフが虚を突かれたような顔をした。それから照れくさそうに小さく吹き出した。 「忙しくはないし、今日の予定はこの打ち合わせだけだが、このまま一緒にいたら、押し倒さない自信がなくてな」 「!」  それを聞いて、今度は俺が目を丸くした。頬が熱くなってくる。 「別に……そうすれば良いだろう?」 「クラウス?」 「だ、だから! 俺達はその、婚約者なんだしな」  背後にある寝室へと続く扉へ振り返りながら、俺は述べた。するとシュトルフが息を呑む気配がした。なんだか気恥ずかしくなってしまう。 「寝室に案内して頂けますか? クラウス殿下」  するとどこか楽しそうな声音で、わざとらしい敬語でシュトルフが言った。ギュッと一度目を閉じてから、頷いて俺は立ち上がる。そうして寝室の扉を開けて中へと入る。ついてきたシュトルフが中に入った時、俺は扉を閉めて施錠した。 「脱がせて良いか?」 「……ああ」  頷いた俺は、シュトルフの前に立つ。そうしていたら、腕を引かれた。そして脱ぐ前に寝台へと押し倒された。ふかふかの枕に後頭部がぶつかる。その状態で、シュトルフが俺の首元から服をはだけ始めた。肌が顕になる度に、そこに口づけられる。 「ずっと手が届かない存在だと思っていた」  シュトルフはそう言うと、俺の右胸の突起に口を寄せた。そして唇で乳首を挟むと、舌先でチロチロと乳頭を転がした。 「っ、ん」  俺の口から、鼻を抜けるような声が零れる。シュトルフの左手は、俺のベルトを引き抜き、下衣の上から、陰茎を撫で上げている。そうされるだけで、俺の体はゾクゾクしてしまう。 「ぁ……」  乳首を甘く吸われて、俺は思わず声を出した。ジンジンとその箇所から快楽が広がっていく。その後も丹念に乳首を愛撫された。そうしながら下衣を乱されていき、俺は大きく吐息する。シュトルフがポケットから香油の瓶を取り出したのはそれからすぐだった。 「準備が良いな」 「いつ何があっても良いようにと思ってな。俺はクラウスを前にすると、いつだって余裕が無いんだ」  それを聞いて、俺の魔法薬のようなものだろうかと考える。シュトルフが俺を気遣ってくれるのだから、やっぱりデニスの助言通り、俺だって気を使っていた方が良いのは間違いない。 「あ、あ、ああ」  香油を絡め取ったシュトルフの指が、俺の後孔へと入ってくる。根元まで進んできた人差し指を抜き差しされると、より一層俺の陰茎が固く張り詰め、反り返った。その後、二本、三本と指が増える。俺は両腕をシュトルフの首に回した。 「もう良い、早く」 「求められて悪い気はしない。実際、俺も我慢が効きそうにもない」  シュトルフはそう言うと、指を引き抜き、服を脱ぎ捨てて、剛直の先端を俺の菊門にあてがった。 「ああ、ァ」  ググッと、シュトルフの陰茎の先端が挿ってくる。固くて、熱い。まだ俺は、挿入の感覚には慣れない。ツァイアー城ではあんなに何度も交わったが、日数でいうならば、これは二度目だ。まだ、二度目だ。  シュトルフの肉茎が進んでくる度に、触れている俺の内側がドロドロに熔けそうな感覚に襲われる。実直に挿ってきた熱い質量が、そのまま根元まで入りきった時、俺は生理的な涙を浮かべていた。辛いわけでも痛いわけでもないが。  純然たる快楽が、俺の思考に霞をかからせていく。 「動くぞ」 「あ、ああああ! あ、ァぁ」  ゆっくりとシュトルフが動き始めた。だがその先端が、容赦なく俺の感じる場所を刺激した。そうされると、体中に快感が響く。俺の息はすぐに上がった。俺は両腕でシュトルフに抱きついたまま、その感覚に浸る。 「ンん、ぁ……ぅ、あ、ああ!!」 「絡み付いてくる」 「言うな、ぁ、ア!」 「好きだ、クラウス」 「俺も――ああああ!!」  俺が気持ちを返そうとした時、シュトルフの動きが早くなった。激しく抽挿されると、頭が真っ白になってしまう。 「あ、ッ、ひぁ、アあ!」 「俺の方が、絶対にクラウスを好きだという確信がある」 「な、俺だって――や、あ、あ、ああ、激し、っ!!」  そのまま何度も貫かれ、俺は理性を飛ばした。腕だけでなく、足もシュトルフの体に絡めて、激しい律動に耐える。 「出すぞ」 「ん、ン――!」  シュトルフが俺の中に放つ。その時感じる場所を突き上げられたから、その衝撃で俺もまた放った。そのまま、ぐったりと寝台に沈む。シュトルフの腹部を、俺の出したものが汚していた。 「あ、わ、悪い」 「ん? 何が?」 「……隣に、俺専用の浴室がある」 「借りる事にする。今日はもう一度は、我慢しておくか」  悪戯っぽくシュトルフに言われて、俺は思わず目を閉じた。

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