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第58話 ※
※性描写ありです。苦手な方は飛ばしてください。
くちゅくちゅと、水音が鼓膜を震わせる。互いの熱を感じながら、貪欲に舌を絡めて求め合った。
欲望を引きずり出してやろうと、舌で撫ぜて、食んで。唾液を交換し合って、互いの口腔を犯し合う。ゾクゾクと背筋を駆け上る快感に、吐息は甘く熱を持っていった。
互いの体温が等しく熱くなるまで味わい尽くして、僕の身体はベッドに押し倒される。
荒い息遣い。欲望を灯した瞳が真っ直ぐに僕を見つめていて、ずくりと下肢が疼いた。
「……電気、消して。」
掠れた声で懇願すれば、総士さんは壁に手を伸ばしカチリと照明のスイッチを落としてくれる。ベッドサイドに置かれたスタンドライトの淡い光が室内を映し出した。
「……ねぇ、それも消さない?」
「あ?」
互いの顔が見える僅かな光にすら嫌悪感を示した僕に、総士さんの眉がひそめられる。
同時にその手が僕がパジャマ代わりに着ていたロングTシャツの裾に伸ばされたのを、僕は咄嗟に掴んでいた。
「待ってって。このまましたら……たぶん萎えるよ?」
この布の下にある肌は、お世辞にも綺麗だなんて言えない。だから誰かとする時は極力見られないようにしてるんだけど。それが、想いを受け入れてくれた人なら尚更だ。
「それにさ、総士さんそもそもストレートでしょ?男の身体なんて…」
「お前もう黙ってろ。」
言葉は最後まで言わせてもらえなかった。
僕の膝に体重をかけ身動きを封じた総士さんが、僕のロングTシャツを一気に捲りあげ露になった痣だらけの素肌に顔を寄せる。浅黒くうっすらと残る痕に噛み付くように吸いつかれた。
かさついた唇が僕の脇腹を辿り、痕を残していく。
「ちょ、……ぁ、」
片手しか使えないせいで倒れるように覆いかぶさってきた総士さんは、僕の下肢にぐりぐりと自らの下肢を擦り付けてきた。がちがちに固く存在を主張しているものが布越しに擦れあって、思わず身体が跳ねる。
「んぁっ、…」
ぞくりと背筋を駆け上った快感を追って無意識に僕からも腰を動かし擦り付ければ、総士さんは口の端を僅かにつり上げた。
「この程度で萎えるようならそもそもお前とこんな事しようなんて思わねぇんだよ。黙って抱かれてろ。」
総士さんが僕に跨ったまま、着ていたシャツを脱ぎ捨てる。
普段運動なんて全くしないくせに、実はアウトドアなんて意外な趣味のおかげなのか適度に鍛えられたその身体に、無意識のうちに息を飲む。
触れたい。
僕は総士さんを押しのけてベッドの上に身を起こし、自らシャツを脱ぎ捨てていた。
優しく笑ったその人に身を寄せて鎖骨の下に唇を寄せて痕をつけてやれば、そのまま抱き寄せられる。総士さんの膝の上、触れ合う素肌に体温が跳ね上がっていくのがわかった。
首筋に口づけと共に、ちゅ、と甘い痛みが落とされる。
心臓がものすごい速さで跳ねて、脳髄が溶けそうなほどに熱い。目の前のこの人に触れること以外、何も考えられなくなっていく。
セックスは好きだ。何も考えずに気持ちよくなれるから。忘れたい事が多すぎて、僕は何度となく誰かとこういう行為をしてきた。
だけど、この人とのセックスは違う。
「晃 、」
熱を孕んだ声が耳元で僕の名前を呼ぶ。それだけで心臓が満たされていく。
この人が欲しい。身体の内に取り込んで、溶け合って、この人の全てを僕のものにしてしまいたい。
忘れるためじゃない、覚えておくために。一夜限りだっていうなら、一生残るくらい身体に刻みつけたい。
溢れる想いは止められなかった。
首筋から鎖骨、脇腹と唇で辿って、僕はそのまま彼の股間に顔を埋めた。
下着に手をかけ布を押し上げていたそれを外気に晒してやれば、それは既に限界まで張り詰めていて、先端からは先走りが滲んでいる。
「おい、あき…っ、」
僕は躊躇いもなくそれを口に含んでいた。
頭を押さえつけられ引き離そうとされたけど、無視して舌を這わせる。
独特の苦味が口に広がったけど、嫌悪感なんて一つもなかった。もっと味わいたくて、夢中で舌を這わせる。
ぴちゃぴちゃと響く水音も、時折漏れ聞こえる吐息混じりの声も、全部が興奮材料にしかならない。
喉の奥まで使って必死に咥え込めば、頭上から余裕のない声が漏れた。それが嬉しくて、もっともっと感じさせたくて、僕は無我夢中になってしゃぶりつく。
「っ、も、離せっ、」
髪を掴まれ強い力で引かれた。だけど、限界が近いんだってわかって僕は逆にそれを求めた。喉の奥の奥まで咥えこんで根元から締め上げてやる。
「っ、くそっ、……っぅ、」
やがてどくんと脈打ったそれから勢い良く放たれた白濁を全て受け止めると、僕はそれを口に含んだままニヤリと口の端に笑みを浮かべ息を荒くする総士さんを見上げた。
「おま、っ、吐き出せ、」
焦る総士さんの言葉は綺麗に無視して僕はそれを口に含んだままゆっくりと身を起こすとヘッドボードの小さな引き出しに手を伸ばし、そこにしまっていた銀色のパッケージを取り出す。
総士さん自身知らなかったはずだ。以前先輩から没収してスラックスのポケットに入れっぱなしになっていた避妊具が、まさか大事に保管されていたなんて。
「お前、」
目を丸くする総士さんに思わずふふ、と笑いながら僕は目の前でパッケージの封を切り、中から取りだしたゴムを中指と人差し指にはめた。
同類である澤井先輩の持ち物だっただけあって、潤滑ゼリーを大量に内包していたそれにさらに口の中に残していたままになっていた白濁を絡める。
「少し、時間ちょーだい。」
淡い光に照らされてぬらりと濡れ光るそれを、脚を開いて自らの後孔に推し当てれば、総士さんの喉がごくり動いたのがわかった。
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澤井さん?と思った方は20話読み返していただけると。
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