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第1話
誰でもいい
俺が生まれた意味を教えて……
何を成せば、神様は迎えにきてくれますか?
何をしたら望まれて、俺は死ねますか?
郊外から少し外れた静かな場所にある廃れた小さな教会。
そこで一人の男は黒のシンプルな十字架を握り締め、古くあちこちにヒビが入ったマリア像に今日も跪いていた。
熱心に祈りを捧げるのはこの教会に捨て子として育てられたオメガの性を持つ男。
黒い髪に白く陶器のような滑らかな肌。大きな二重の瞳は髪と同じ黒色で低くもなく高くもない鼻。桜のように色付いた形の良い唇は人を惑わせるような魅力を放ち、彼を包む空気は艶やかで妖しげなものだった。
閉じていた瞳を開け、目の前に聳え立つマリア様を見上げると、初音は物思いに更けながら吐息を漏らした。そのとき―――
「初音」
名前を呼ばれ、初音は折っていた膝を持ち上げて立ち上がった。
教会の扉がギギィっと音を立てて開く。そこには紺のワンピースに身を包む年老いたシスターが立っていた。
「おはようございます。シスター」
「おはよう。初音。ご飯の時間ですよ」
柔らかな笑顔のシスターに初音と呼ばれた男は頭を下げると握り締めていたロザリオをポケットにしまう。
「あと……」
言葉を濁すシスターに初音は苦笑しながらその続きを代わりに声にした。
「仕事ですか?」
静かに聞くと、女は小さく頷いた。
「分かりました」
淡く微笑み、初音はシスターを通り過ぎて教会を出た。
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