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第2話
この世界には男と女。それ以外にアルファとベータ。そして、オメガという性がある。
人口のほとんどが容姿、能力が平均値のベータを占めている。
そのうちの一割がアルファ。
かなり少ない割合なのだが、そのアルファよりも更に低い割合で絶滅危惧種扱いされているのがオメガだった。
容姿、頭脳、運動、その全てに優れたアルファはこの世界の王様だ。ベータはそれを支える脇役。そしてオメガは……
「……もう一年経ったんだな」
ポツリと空を見上げて初音は一年前に自分が出産したことを思い出した。
彼はこの世の0.1%という低い割合でしか誕生しないオメガの性を持つ者だった。オメガは生殖能力に長けており、一カ月に一度、発情期を迎える。
そのとき誰かと性行動をした場合、妊娠率は80%。
そのとき生まれてくる子供は99・9%の確立でアルファ。
残り0・1パーセントでオメガが生まれる。オメガ性を持つ者は男でも妊娠は可能だった。
初音は既に3人の子供を産んでいた。
オメガは世界の宝。
その国々で重宝されている。と、いうのは表向きで、本当の所はただの生殖マシーンで国の所有物として扱われている。
発情期を迎えると国があてがうアルファに売られ、子を宿し、出産。
そしてまた捨てられる。
一年、身体を休ませたら次の依頼がきて、またアルファに買われるの繰り返しだ。
そして、今年、初音の身体は休暇を終えた。四人目の子供を産む機械として起動しなければいけない。
憂鬱な気持ちに小さく息を吐くと、気持ちを切り替えて、初音は食堂へと向かった。
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