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第5話

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」  日本が誇るアルファの家系を持つ湯藤家の執事とメイドが大きく立派な屋敷の前で門を開き、初音と林に深々と頭を下げた。 屋敷の中へ通され、煌びやかな装飾品が並ぶ応接室へ通された二人は言われるがままソファに腰掛け契約者を待つ。 「四回目ともなると、落ち着きを見せるようになったもんだな」 皮肉を言ってくる林に初音はなんと答えるのが良いか分からず黙り込んだ。 「俺が話しかけてやってるんだぞ。礼ぐらい言えないのか?」 「……ありがとうございます」 どこまでも自分を見下し、横柄な態度取る林が初音は苦手だ。 オメガへの嫌悪感が大きいこの男とは出会った時から良い関係ではない。 だからといって、歯向かえる相手でもなく、初音はいつも波風が立たないように林の望むように動いていた。 それでも林は初音が気に入らないようで、貶めるような言葉を次々と吐き捨ててくる。 「親にも捨てられたゴミ屑が。生きてて恥ずかしくないのか?性に卑しい気持ち悪い生き物め」 「………」 「お前みたいな奴、さっさと死んで欲しいよ。一緒にいるだけで胸糞悪い」 それはこっちも一緒だと言いたい気持ちを封印し、初音は小さく溜息を吐いてこの苦痛な時間が早く過ぎるのを待った。そのとき、部屋の扉が開かれる。 「お待たせして申し訳ない」 部屋へ入って来たのは湯藤家当主、湯藤 拓真(ゆどう たくま)。そして、その息子の満(みちる)だった。 温和な雰囲気で柔らかな笑顔を向ける拓真は初音を見て嬉しそうに手を叩いた。 「君がオメガの初音君か?よく来てくれたね!歓迎するよ!」 待ちに待ったオメガだと喜ぶ拓真とは違い、隣に立つ満はどことなく不満そうに初音を見ていた。 「初音です。……精一杯、ご期待に添えるように頑張ります。宜しくお願いします」 頭を下げて挨拶すると、拓真は軽快に笑って満と共にソファへ腰掛けた。 「君の相手は息子の満だ。少し気難しいやつだが悪い子じゃない。仲良くしてくれ」 温和に話す拓真に初音は黙って頭を下げたあと、満へ視線を向けた。 亜麻色の髪と瞳を持つ綺麗な男は紛れもないアルファ特有のオーラを放っていた。 切れ長の瞳に筋の通った高い鼻。薄い唇に滑らかな肌をしたシャープな輪郭。美しくもあり、男らしく整った顔立ち。 文句なしの美男子だったが、自分を見る瞳は嫌悪の色が映し出されていた。

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