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19.提案

アデルバード様と一緒に僕が使わせてもらっている部屋のソファーに腰掛けていると、ふいに彼が僕に話があると言ってきたから、首を傾げた。 「リュカは家族が欲しいとは思わないかい?」 「…家族?」 「ああ、私とも結婚して家族になるけれど、そうではなくて、リュカには両親や兄妹が必要じゃないかと思っているんだよ」 両親や、兄弟…… 浮かんだのは僕のことを嫌っていた公爵家の父やアデレード兄さん、義母の顔だった。 思わず自分の両肩を手で抱きしめて身震いする。 家族にはいい思い出がない…。 今の僕には離宮に居る皆が家族で、それじゃダメなんだろうか? 「家族を作らないとアデルバード様は困りますか?」 思わずそんな疑問が飛び出ていた。 もしも、彼が困ると言うなら僕は彼の言うとおりに家族を作ろうと思う…。 アデルバード様を困らせたくないって思うから。 「それは心配いらない。それよりもリュカの気持ちが大事だ」 肩にあった僕の手の片方をアデルバード様が両手で包み込んで、僕の気持ちに寄り添うように微笑んでくれた。 いつもはアデルバード様の熱を感じれば不安なことも何処かに吹っ飛んでしまうのに、今は少ししか気持ちが晴れなくて、家族のことは僕にとってそれくらいトラウマみたいなものなんだって自覚する。 「…考える時間が欲しいです…」 弱々しくお願いすると、アデルバード様は分かったって言ってくれた。その優しさについ甘えて、僕はこうやって問題を先延ばしにしてしまう。 それでも今は、家族について考えることが怖くて、公爵家のことを思い出してしまうと身体が震えてどうしようもなく辛いんだ。 いつか…いつかきっと、皆が僕のことを受け入れてくれる。血が繋がっているんだから、きっと諦めなければって何度も自分に言い聞かせては裏切られてきた日々。 それは僕に血の繋がりの無意味さを嫌という程に突き付けてきた。 家族ってなんなんだろう…。 愛ってなんだろう。 未だに欠けてしまったパズルのピースを探すように、その疑問を持ち続けている。 「…アデルバード様は…僕のこと捨てないで…」 口から飛び出た本音はいとも簡単に彼に届いて、それを受け取ったアデルバード様はそっと僕を抱きしめて、安心させるようにただ寄り添ってくれた。

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