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39.パーティー

パーティー当日、エーデルシュタイン公爵家の馬車に僕とエレノアの2人で乗り込むとミラー公爵家まで向かった。 「楽しみですわね」 「そうだね」 にこにことご機嫌そうに微笑んでいるエレノアに微笑み返して、浮き足立ちそうになる心を押える。ずっと憧れていた社交界に初めて参加することに少なからず喜びを感じている僕は、あくまでもエレノアの付き添いなんだからって自分を戒めて気を緩めないように注意する。 「お手をどうぞ」 会場の入口付近で馬車を停めて降りると、エレノアに手を差し出して支えてあげる。嬉しそうに頬をほんのりと染めているエレノアは着飾っていることもあり贔屓目を無しにしても凄く可憐だと思う。 「兄妹にこうやってエスコートして貰うのが夢だったの。嬉しいわ」 「その夢を僕が叶えてあげられるなんて光栄だな」 2人並んで会場入りすると、煌びやかな貴族の方たちがそれぞれの楽しみ方で過ごしているのが目に飛び込んできた。ロペス公爵家に居た頃ずっと憧れていた社交界にいざ足を踏み入れると、賑やかな中に微かな緊張感を感じて脚がすくみそうになる。 けれど、隣で優雅に微笑みを浮かべるエレノアを視界に入れると怖気付いている暇なんてないって力が湧いてくる気がした。 「あら、エレノア様じゃありませんこと」 「ジュディ様御機嫌よう」 茶色の髪を緩くハーフアップにした少女がこちらへと歩み寄ってきて、エレノアに親しげに話しかけてきた。 ふわりと彼女から花人特有の花の香りが微かに漂ってきて、彼女が花人だというのが直ぐにわかった。 「そちらの方はどちら?」 「…私のお義兄様ですわ」 「お初にお目にかかります。リュカ=エーデルシュタインと申します」 「私ったら気づきませんでしたわ!ご兄妹なのに似ていないのね」 ふわふわとそう言って笑う彼女にエレノアの眉が微かにぴくりと動いた。きっと目の前の彼女に悪気はない。けれど、僕がエーデルシュタイン公爵家の養子になったことは周りの貴族達にとっては周知の事実だとルート様も言っていたから、今の発言はあまり良くはない気がする。 「…貴方には関係ありませんわ。私、アレンに挨拶をしに行きますので失礼致しますわ」 素っ気なく彼女にそう返したエレノアは僕の腕に手を添えて優雅にジュディ様の横を通り過ぎていく。 それに困惑したような顔をしているジュディ様を横目に見ながら、良かったの?って尋ねたら、エレノアは相変わらずの素っ気ない態度で、かまわないわって答えた。

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