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40.冷たい態度

エレノアと二人会場を歩きながら、目的であるアレンという人を探す。会場内は広くて、人を1人探すのさえとても苦労するし、もしかしたらまだ来ていない可能性だってある。 「あ…いたわ」 「どの人?」 「あの赤い髪の…」 エレノアの視線の先を辿って行くと、確かに赤い髪の青年が壁の近くに居て、まだ微かに幼さの残る顔を見てエレノアよりも年下かもしれないと思った。 エレノアは釘で打たれたように、真っ直ぐに彼だけを見つめたまま微動だにせず、僕はそんな彼女の様子に彼がエレノアの好きな人なのだと悟った。 「いかないの?」 立ち止まったまま動こうとしないエレノアに尋ねると、行くわって決心したように返されて、僕はそれに頷いた。 「…アレン」 いつもの彼女にしては覇気のない弱弱しい声でアレンに声をかけたエレノアは僕から手を話すと彼の目の前まで歩いていく。 「エレノアか。何の用だ」 「あら、挨拶をしては行けませんの?」 「かまわない。それよりもジュディを見なかったか。一緒に来たのにはぐれてしまった」 「……っ…先程あちらの方にいましたわ。…っ、それにしてもまだあの子と仲良くしているのね。あんな子を隣に置いておくのはあまり宜しく無いんじゃないかしら」 エレノアの言葉にアレンが厳しい表情になって、それを正面から見たエレノアが微かに悲しげな表情になった。 僕は隣で様子を伺いながら、あのジュディという子がアレンの好きな人なのだと理解する。それと同時にアレンがエレノアのことをあまり好きではないことも見ていて分かった。 「エレノア、お前もジュディのことを男爵家の子だと下に見ているのか」 「違いますわ!あの子がもっとしっかりしていればこんなことは言わないわよ。ジュディ様は私のお義兄様のことも知らなかったのよ。それに目上の者に自分から話しかけるなんて…」 「彼女を普通の貴族の枠に嵌め込むな」 「…っ…」 アレンの言葉に泣きそうになっているエレノアを見て、僕はこれ以上は駄目だと悟った。 そっとエレノアの傍らに寄り添って彼女の手を取ってあげる。彼女が僕にしてくれたように。 「リュカ=エーデルシュタインと申します。お名前をお伺いしても?」 割り込んできた僕に視線を向けたアレンは髪と同色の赤い瞳を細めて、アレン=マクホランドですと答えた。 「義妹を連れて行ってもかまわないかな?」 「…お義兄様…」 エレノアが僕の顔を見て悲しげに眉を寄せた。 「かまいません。俺の方は用はありませんから」 「……そう。ただ、一つだけ言わせてね」 「なんです」 「エレノアの話をもう少しちゃんと聞いてあげてくれるかな?君の好きな子を悪く言いたくてあんな風に言っているわけではないと思うから。きっと理由があるはずだよ」 「……」 僕の言葉を聞いてアレンはエレノアに一瞬視線を移してから、分かりましたって素っ気なく答えた。 それに僕は笑顔で、それじゃあ楽しんでって返してエレノアを連れてその場を離れる。 「…私…喧嘩するつもりじゃ…会えばいつも喧嘩ばかりよ…」 「大丈夫だよ。泣いたら折角綺麗にしているのに台無しになってしまうよ」 今にも泣きそうなエレノアを連れて会場から離れると、休憩室の椅子にエレノアを座らせて落ち着くまでそこで休むことにした。

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