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42.もう、負けない
くりくりと丸い瞳を瞬かせてジュディが僕の目の前に立ち止まった。身構える僕とエレノアを交互に見た彼女は、もう一度言った通りでしたって呟いた。
「エレノア様ったらその方にいじめられているのでしょう?本当はお義兄様のことお嫌いなのに仲のいい振りをするなんてお可哀想だわ」
まるで自分の言っていることが正しいって言うみたいにそう言ってきたジュディにエレノアが訳が分からないわって言い返した。
「だって泣いてらっしゃるじゃない」
「…これは…」
「私、エレノア様にお義兄様が出来たなんて全く知りませんでしたのよ。それでアレン様にお聞きしたら、その方は陛下に嫁ぐために隣国から来られたと…。私、それを聞いてエレノア様のことがとても心配になりましたの!」
彼女がどうしてそんなことを言い出したのか分からないまま、僕はただ黙ったまま彼女を真顔で見つめていた。
「エレノア様は皇后候補だったでしょう?だから、きっと無理に仲良くしてるのでは無いかと思ったのです。でも、やっぱりそうだったのですね!彼にいじめられたのですか?私が味方になりますから負けては行けません!貴方もっ、エレノア様がお美しくて嫉妬なさってるからって酷いことをしては行けませんわ!」
「貴方、自分が何を言っているかわかっているのかしら」
エレノアが心底怒った声でそう言っても、彼女は分からないって言うみたいに首を傾げるだけで、話を聞いてくれない。
男爵令嬢が公爵位の僕達にこんな風に気軽に声をかけること自体失礼なことなのに、アデルバード様と結婚するために隣国から来た僕に対してエレノアをいじめていると言いがかりを付けている。
そんなこと普通ならしないだろうし、きっと何も知らなかった頃の僕なら戸惑って焦って我慢して言われっぱなしになっていたと思う。
けれど、今の僕は前の自分とは違う。
今更こんな言葉に傷ついたり、負けたりなんてしない。
僕は今にも怒りに任せて彼女に文句を言いそうになっているエレノアの肩に手を置くと、そっとエレノアを守るように自分の後ろに移動させた。
ジュディと対峙しながら頭の中に思い浮かぶのはルート様に教えられたこと。
僕は1度ゆっくりと目を閉じて、彼との授業を思い出した。
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