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46.泣く声につられて

一頻り踊り終えた僕たちは、会場に居る数人の人達に声をかけられて、それに対応しながらパーティーを楽しんだ。 しばらくして、エレノアも僕もすっかり疲れてしまって、そろそろ帰ろうかと決めて出口へと向かった。 会場から出て、中庭を通っていると女の子の泣く声が聞こえてきて僕たちは顔を見合わせて、 そろそろとそちらへと足を進めると、泣いている女の子の正体がジュディだということに気がついて、思わず足を止める。 「…アレン…」 ジュディに寄り添うように彼女の涙を拭いてあげているアレンをエレノアが視界に入れてぽつりと彼の名前を呼ぶと、それが聞こえたのかアレンとジュディがこちらに顔を向けた。 「…何の用だ」 「たまたま泣く声が聞こえてきたから来ただけよ。すぐ帰るわ」 アレンと対峙したエレノアがそう言って、ジュディの肩に回されているアレンの手をちらりと見る。 彼女はそれを見て微かに傷付いたようにきゅっと唇を噛んだ。 僕はエレノアの肩を数回とんとんと指で小突くと、自分の後ろに居るように言ってアレンの前に出る。 「あんたが泣かせたって聞いた」 「彼女から?」 「…ああ。最低だな」 睨みつけてくる彼に僕は笑みを浮かべる。 「彼女からちゃんと詳細は聞いたの?」 「聞いたさ。あんたがエレノアをいじめてるかもしれないってこともな」 アレンがじっと僕のことを睨みつけてきて、そんなことを言って来るものだから、おや?って首を傾げた。 彼はエレノアのことを嫌っているわけでは無いのだろうか。 「…エレノアのこと嫌ってる訳では無いんだね」 エレノアは僕の後ろにいるけれど、敢えて尋ねてみる。 「……知らねえよ」 目を逸らした彼を見つめながら、二人の間にはなにかあるのかもしれないって思った。 「…アレン、私……」 「ジュディに謝ったらどうだ」 冷たい目でこちらを睨みつけながらそう言ったアレンに、ジュディがぎゅっと縋りついて、私は構いませんからって言ってうるうると瞳を潤ませる。 それを黙って僕の後ろで見ていたエレノアは、泣きそうに震える声で、変わったわねってアレンに向かって呟いた。 その言葉にアレンがくっきりと眉間に皺を寄せる。 「変わったのはお前もだろ。忘れてないだろうなっ、お前が先に俺の事を裏切ったんだからな」 「…っ……」 アレンの言葉にエレノアは口をはくはくさせて何か言い返そうとするけれど、言葉は出てこないのか最後は唇を噛み締めながら俯いてしまった。 「…エレノア行こう。お義父様とお義母様が帰りを待っているよ」 また、泣いてしまいそうなエレノアの手を引いて、2人に簡単なお辞儀だけしてその場を離れた僕にエレノアが黙って着いてくる。 馬車に乗り込むと、エレノアの隣に彼女の手を握ったまま腰掛けた。 「何があったか僕に話してみてくれないかな?」 そっと顔を覗きこむようにして言えば、エレノアがそろそろと顔を上げて潤んだ瞳で僕の事を見た。

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