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52.別行動
ポロッニョを食べている僕を見ておばさんがやけに嬉しそうに顔を綻ばせる。
「そんなに気にいったんなんら、1本と言わず5本!いやっ、10本くらい買って行っておくれよっ」
おばさんの圧に押されてたじろぐ僕をアデルバード様が楽しげに見ていて、助けて欲しいって思ってしまう。
「私らもいっぱいいっぱいでねえ。ほらっ、最近税が上がっただろ?あんたら偉い貴族様なんだろ。どうにかしてくれないかねえ」
おばさんの言葉にアデルバード様がすっと笑みを消すと、もう少し詳しく教えて欲しいっておばさんに頼んだ。僕は1歩後ろに下がってアデルバード様とおばさんの話を聞くだけに徹する。
彼のお仕事の邪魔はしたくない。
「領主が税を上げちまって、私らは上がったりだよっ!領主は聞く耳も持たないし、今年は日照り続きで食べるのさえ大変だってのにね」
「……そうか。話を聞かせてくれてありがとう」
アデルバード様はそう言ってポロッニョを数本追加で買うと、僕の手を引いて歩き出した。
「ルートヴィヒいるか」
「ここに」
さっきまで姿の見えなかったルート様が突然現れて僕は驚いたけど、アデルバード様は歩きながらルート様と先程の件を話し始めた。
「私の知る範囲では税が上がったという報告はありませんが……」
「他の者にも尋ねてみよう」
アデルバード様はそういって他の屋台の人にも声をかけ始めた。皆一様に税が上がったと話しをしていて、アデルバード様とルート様はどんどんと厳しい顔つきに変化していく。
「領主の元に行く。リュカは好きに街を回っていていいからね」
「……わかりました」
本当は僕も一緒に行きたいけれど、今の僕じゃまだアデルバード様のお役には立てないから、大人しく彼の言う通りにすることにした。
少しだけ悲しいと思ってしまう。
領主の家は街の西南にあるようで、僕はアデルバード様達と別れて、シシィとユンナとラセットさんと一緒に街を見て回ることにした。
「折角のデートだったのにっ!」
ユンナが悔しそうに歯ぎしりして、僕はそれに笑顔で、お仕事に来たんだからって言った。
「あっ、見てあそこに綺麗な装飾品のお店があるから見てみようよ」
僕が指さした先には女の子が好きそうなネックレスやイヤリングの置かれた装飾品のお店があって、皆行きましょうって頷いてくれる。ラセットさんは余り興味は無いみたいだから、店の外で待っていてくれるみたいだ。
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