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53.僕の……

シシィとユンナと僕と3人ではしゃぎながら店内を見て回る。宝石が嵌め込まれた装飾品はキラキラしていて目を奪われてしまう。 「見てくださいっ、とっても綺麗ですよ」 ユンナが指さした所を見ると、色とりどりのブローチが並べてあってそれを眺めながら、これ素敵だなって思わずその中の1つを手に取った。 琥珀が嵌め込まれたブローチはシンプルながら品のいい装飾が施されていて、まるでアデルバード様の様だと思った。 「これ、買おうかな……」 アデルバード様から支給されていたお金は使うつもりは無かったけれど、これはどうしても欲しいと思ってしまって僕はこのブローチを買うことに決めた。 「きっと陛下も喜ばれますよ」 「そうかな?」 ユンナの言葉に少し恥ずかしくなって誤魔化すように笑うと、勿論ですって言われて、へへって僕は笑い声を漏らす。 お金を支払って、丁寧に包みに入れてもらったそれをポケットにしまうと、僕達は店を出た。 「シシィ、元気が無いけれどどうかしたの?」 「……あ、いえ……なんでもないの」 ユンナとシシィの会話が後ろから聞こえてきて、そちらに視線を向けると確かにシシィの顔色はあまり良くなくて心配になった。 「少し休む?」 「い、いえっ!それよりも私美味しいお菓子のお店を知っているんですっ。行きませんか?」 僕の問いかけにシシィがあえて明るい口調でそう言ってきて、僕もそれに乗っかって、それじゃあそこに行こうかって返事をした。 「少し中の方にあるのですが……」 「かまわないよ。ほら行こうっ」 元気の無いシシィの手を引いて、僕が歩き出すと、ユンナとラセットさんもそれについて来てくれる。 シシィは今にも泣きそうな顔をしていて、彼女がどうしてそんな顔をするのか僕には分からなかった。 しばらく歩いて、少しずつ閑散としてくる街を眺めながら、あんなに賑やかな街にもこんな所があるんだと、まるで別の場所に迷い込んだような錯覚を覚えた。 かなり奥まで歩いてきたけれど、道は迷路のように入り組んでいて、案内無しでは帰ることもままならない気がして不安になってくる。 「シシィ、まだつかないの?」 「……リュカ様……ごめんなさいっ!」 「え……」 シシィの言葉に立ち止まると、彼女は涙を撒き散らしながら前の方に駆けていくった。そしたら、急に街の角から大勢の男の人達が現れて、僕達3人はあっという間に囲まれてしまった。 何が起こったのか、混乱する頭でなんとか状況を把握しようと試みる。 男達の奥で祈るように手を組んで涙を流しながらこちらを見ているシシィと目が合った。 「……シシィ……これはどういうこと?」 「……ごめんなさいっ…こうしないと……私っ」 悪い冗談かなにかだろうか……。 その時、狭い通路の中に無理矢理馬車が割り込んできて、僕は見覚えのある紋様に眉をひそめた。 どうして……。 「ラセットさん、ユンナ……相手の狙いは多分僕だと思う」 「リュカ様、それは一体どういう」 ラセットさんの質問に、僕も内心でどうしてだろうって思ってしまうけれど、僕を狙ってるってこと以外考えられなくて僕はため息をついた。 「……ロペス家の差し金だと思う」 馬車にはロペス家の紋様が描かれていて、それを見つめながら、今更僕になんの用だろうって苛立ちが募っていく。 僕はざっと周りを見渡して、僕たちに武器を構えている男の人たちを見つめた。 こんな状況なのに頭の中はどんどんと冷静になってきていて、こんな時こそ慌てたらダメだって自分に言い聞かせる。 「……ユンナ、武術の嗜みがあると聞いたけど」 「っ、はい。命を賭して全力でお守りします」 「ううん……君にお願いがあるんだ」 「リュカ、様?」 3人背中合わせになりながら、小さな声で2人に話しかける。 「ラセットさん、ユンナが逃げれる道を確保できるかな」 「……なんとかやってみます」 「リュカ様!?」 「ユンナ、領主の家に行ってアデルバード様にこのことを伝えて欲しい」 「……でもっ…」 渋るユンナの手をそっと握って、お願いって言うと、ユンナは分かりましたって渋々ながら応えてくれた。 女の子のユンナを危険に晒す訳にもいかないし、何かあった時男手がある方が助かる場合もあるから。 「……アデルバード様にある言葉を伝えて欲しい」 「……はい」 僕は真っ直ぐに前を見据えながら、ユンナに言葉を託した。 「僕の一番星……そう伝えて欲しい」

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