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60.早く速く

〜アデルバード視点〜 ルートヴィヒの準備が整うと私達は宮殿の入口付近で集まってルートを確認しあった。 「この道を行く。別荘まではこのルートが1番近い」 「それがいいでしょう」 地図を拡げてルートヴィヒと話し合いをしているとユンナとシシィが来て、そちらに視線を向けた。 「陛下……どうかリュカ様をお願い致します」 心配そうにこちらを見つめてくる2人に私はしっかりと頷いて、当たり前だと応える。 リュカは必ず助ける。 「お気をつけて」 ユンナの言葉に頷くと、地図をしまって馬に跨った。ルートヴィヒと護衛も馬に乗ったのを確認すると勢いよく馬を走らせる。 「陛下、夜ですから慎重に向かいましょう。道は崖も多いですから」 「ああ」 少し後ろを着いてくるルートヴィヒに声をかけられて私は焦る気持ちをなんとか押し止めた。 ここで焦って怪我でもしたら元も子もない。 夜ではあまりスピードも出せないため周りに気を配りながら何度もルートを確認して道を進んでいく。 「リュカ……」 「リュカ様ならどんなピンチも乗り越えてみせますよ。弱そうに見えて根性はありますから」 「リュカの先生が言うならそうなのかもしれないな」 「ええ、間違いありません」 不器用なルートヴィヒなりに私のことを気遣ってくれているのか、それがなんだか今は有難い気もする。 早く見つけてやりたい。 それでもやはり焦る気持ちは止まらない。 真っ暗な道を進んでいると、段々とリュカにこのまま手が届か無いのではないかと思えてきて、その考えをなんとか振り払って前へと進んでいく。 「陛下少しスピードを落としましょう」 「……っ……わかっている」 リュカ……。 まだまだ別荘までの道のりは長い。 私は深呼吸をすると少しだけスピードを緩めて、ルートヴィヒの隣に並んだ。 そんな私をルートヴィヒが心配げに見ているのがなんとなく分かって、私は相当焦っているのだなと自覚させられた。 はやく助けてやりたい。 リュカからの伝言を思い出す。 僕の一番星……あの言葉はとても重く私の心にのしかかる。 彼の中で1番に輝ける自分でありたいと思う。 いつだってどんな困難からも彼をこの手で救ってやりたいと……。 その一方で、もしも……と考えてしまう弱気な自分もいる。 そのもしもが起こってしまったら、私は彼の一番星で居続けることは出来るのだろうか……。 彼に誇れる自分であり続けられるだろうか。 「……っ絶対に間に合う」 弱気な自分の心を奮い立たせる。 もしもなど存在しないと、強く強く自分に言い聞かせ続けた。

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