リュカ視点に戻ります ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ はらりと自分の髪が床へと落ちるのを視界に捉えながら、一瞬の隙を見てラセットさんの腕に巻かれていた縄を解いた。 「ラセットさんっ、立って！！」 「っ……我慢してくださいよっ！」 ラセットさんが素早く立ち上がると僕の腕を引いて自分の胸に引き寄せると、近くに落ちていた剣を拾って男達を次々に薙ぎ払って行く。 「ちょっとちょっと〜、やめてよねえ、まさか飛び込むなんて思わなかわ アデレードの言葉に僕達に斬りかかって来ていた男達が動きを止めて、その隙にラセットさんが僕を抱き締めたまま男達から距離を取った。 「ちっ、その護衛連れて来る時に殺しとくんだった」 「……アデレードっ！」 「なあに？ほんっとうにうざいなあ」 「もう止めてよ……」 こんなことしても意味なんてない。 ロペス家の未来は隣国でこんなことした時点でもう途絶えてるんだよ……。 「やめないよ〜？だって、お前だけが幸せになるなんて許せないから。僕は天使の落とし子とまで言われるアデレード＝ロペスなんだよ？？それなのに、どうしてこんな惨めな思いをしないといけないのさ！！！」 ジリジリと僕達に近づいてくる彼にラセットさんが剣を向けて対峙する。 アデレードは剣先が見えていないのか喉元近くにあるそれを気にも止めていない風にただ真っ直ぐ僕を見つめて歩を進めてくる。 「僕と君は違う人間なんだ。だから、それぞれがそれぞれの生き方を探す必要があるんだよ。アデレードは許されないことをしてしまったけれど、今ならまだ道を正すことが出来るはずだよ」 「うるさいっ！！黙れ黙れ黙れ黙れ黙れっっ！！！！」 アデレードの腹の底からの叫びに僕は唖然として固まってしまった。 はあはあと肩で息を吐き出していたアデレードはそんな僕を見て急にニタリと嫌な笑みを浮かべ始める。 「……そうだよ……」 「アデレード？」 「……そうさっ……僕にはもう、正せる物なんて残っちゃいない」 アデレードはそう言って剣先に向かって走り出した。剣先とアデレードの距離が近すぎてラセットさんが剣を下ろす間もない。 スローモーションの様に彼が剣に向かって走るのを目に焼き付けながら、彼の目元に涙が光っている様に見えて僕は自分を護ってくれているラセットさんを勢いよく横へと突き飛ばした。