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76.何処へ?
控え室まで向かうと、既に支度を終えたエレノアが微かに緊張した面持ちで椅子に腰掛けていた。
「エレノア」
「お義兄様っ!」
「よく似合ってるよ」
真っ白なドレスに身を包んだエレノアはとても綺麗で、可愛らしくて、きっと彼も惚れ直してしまうんじゃないかと思う。
「エレノア叔母様おめでとー!」
「あら、アステル。叔母様じゃなくて、エレノアお姉様でしょう?」
アステルの叔母様発言に口元をひくつかせるエレノアを見て僕が笑うと2人もそれに釣られて笑い出す。
「エレノア、本当におめでとう」
「ありがとうお義兄様」
エレノアに椅子に座るように促しながら、今日のことについて話をする。
僕も運営係を任されているから、確認したいこともあって、仕方なくアステルには待ってもらうことにした。
「アステル、お母様は少しエレノアとお話があるからそこの椅子に座って待っていてくれるかな」
「はい!」
元気よく手を上げて返事をしてくれたアステルにいい子だねって言ってから座ったのを確認してエレノアと話を再開する。
式の大まかな流れや、出す料理などの話を2、3確認してから僕はエレノアにまた後でって言って話を切り上げた。
「アステルお待たせ。終わったからお爺様の所に行こうか……アステル?」
アステルの居るはずの所にそう話しかけながら振り返ると、アステルの姿がなくて僕は一気に顔を青ざめさせた。
「アステル!?」
「うそっ、ついさっきまでそこにいたのにっ」
僕もエレノアも軽くパニックになって慌てて控え室から飛び出すとアステルの名前を呼びながらあちらこちらを探し始めた。
幼子の歩く距離なんてたかが知れているとはいえ、見つからないと段々と不安になってくるし、何より彼は皇帝の息子だ。
万が一、見つからないとなれば今日の式は中止になることも有り得るかもしれない。
「アステルっ!!!」
廊下を駆けながら、大事な息子の名前を呼び続ける。
エレノアも会場の人達に聞いてくれると言ってくれたから、分かれて探すことにした。
どうして目を離してしまったのか……。
全然見つからないことに不安を覚えて、悪い想像までしてしまう。
ひたすら屋敷を探し回っていると、いつの間にか中庭に来ていて、僕はハアハアと息を吐き出して1度呼吸を落ち着かせた。
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