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第6話

「あおのお家、素敵だね。広くて綺麗で」 「……お前ん家も広いんだろ」 「ここの方が広いよ。うちは、マンションだし、一軒家あこがれてるんだ」 「今度連れてって」 「もちろん! 」 「リビングにどうぞ。青さまが、お友達を連れていらっしゃるなんて、  亡くなった奥様もお喜びですわ」 「操子さん、友達くらいいますよ……そんなもの珍しそうに言わなくても」 「やった、青が初めて連れてきたのが僕!」 「……ち、違う!」 ぐい、と引っ張ってリビングに連れていく。 蒼宙は、大きな瞳を瞬かせていた。 ソファに、蒼宙を座らせる。 「ちょっと、待ってろ。飲み物持ってくる」 「お手伝いさんじゃなくて、青が?」 「悪いかよ」 「うれしい!」 その顔を見て、赤くなってしまった。 不可抗力だと、内心で独りごちながら 冷蔵庫から、牛乳を取り出す。 ガラスの容器から、グラスに牛乳を注ぐ。 ひとつは、カフェオレにしてもうひとつは、 牛乳のグラスをトレイに載せる。 牛乳のグラスを差し出すと蒼宙は、 頬をふくらませた。 「……ほら、飲んで大きくなれよ」 「優しいようで、意地悪だ。身長が低いの気にしてたのに」 「まぁ、遺伝もあるだろうし、でかくなれるとは限らないけどな」 「むむっ」 「俺が素を見せる相手は、限られてるよ」 「ふぇ……っ?」 「蒼宙は、特別だよ。お前は可愛すぎるから」 「ば、バカ。照れることを平気な顔で言わないでよ……でも牛乳ありがとう」 「アレルギーあるなら、無理して飲むなよ」 「虫とお化けのアレルギーしかないよ」 「ぷっ……」 カフェオレを口に運ぶ。 両手でグラスを持っている蒼宙の姿は、愛くるしいとさえ思う。 「あおは、怖いものとかあるの?」 「お化けより人の心が怖いかな?」 「……そうかもね」 しゅん、と俯いた蒼宙に、嫌なことを言ったかと反省する。 「……そんなこと今は考えなくていいんだけどな。 俺達はまだ、中学生に過ぎない。 大人に甘えて守られているのが、正しいと、 周りからよく言われるし」 「あおが甘えないからだね」 「……十分甘えてると思う。親のおかげで、 生きてられるし、日々に憂いを覚えずにいられるんだから」 「大人だよね……」 「本当はお前よりガキかもな」 「あはは」 頭を撫でたくなったが、ぐっと堪える。 「ピアノ弾いてやろうか?」 「わぁい! あおのピアノ!」 飲み物を飲み終えると、片づけて、 自室に蒼宙を誘った。 青が扉を開き、先に入ると、蒼宙は、 遠慮がちに入ってきた。おそるおそると いった風情におかしくなる。 ソファに座らせると、グランドピアノの椅子に座った。

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