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第7話

「か、かっこいい! 美しい!」 「は!? 座っただけだろ……」 「絵になるって僕も思っちゃった」 「うざいから、早くリクエストでも言え」 ぷい、とそっぽを向くと、蒼宙は、笑った。 「愛の挨拶がいいなー」 「ふざけんな! 却下」 「リクエストに制限があるの? 」 「……小っ恥ずかしくないやつなら」 「あおって、かっこかわいいんだね。よくわかった」 「……もう知らん。勝手に弾くから適当に聴いてろ」 叩くように鍵盤を弾きはじめる。蒼宙は、ピアノの上に肘をついて、青を見ていた。 子犬のように目を輝かせて見つめているのが、伝わってきて、怯む。 バレないように、一心不乱にピアノを弾きまくる。 「あお? 」 違う世界にいってしまったのかと、 心配した蒼宙に声をかけられて、ようやく演奏を終えた。 「ぱちぱちぱち!」 「声で拍手するな。アホか!」 「声の方が伝わるかなって」 「……まぁ、いい。お前、楽しそうだし」 「楽しかったよ!」 「お前さ」 「なあに?」 「俺を呼び出したあの時、本気だったのか?」 「……襲いかかったのは、決死の覚悟だよ。気味悪がられてもいいかと思った」 「気味悪かったことはないが……」 「あおは、恋愛とか女の子には、慣れてるんだろうなって。もうしてそうだし」 「……したことない。どんなイメージだよ」 「そ、そうなの? ほっ、とした」 頬が熱を持つ。蒼宙に、そんなふうに思われていたのかと、青はちょっとショックだった。 「あのな、俺、お前と同い年なんだけど。  勝手に女好きの経験豊富なマセガキにすんなよ」 「そんなつもりじゃなかったけど」 「別に同性を好きになるのに偏見はないから、気味悪いとは思わなかったんだよ」 「じゃあ、僕のこと好きになって」 抱きついてくる。ピアノの椅子に座っているから、膝に乗られた状態だ。 首に回された腕は、華奢だった。 ぽんぽん、と背中をたたく。 「付き合うか。そしたら恋愛感情で好きになるかもしれない」 「本当に? 付き合ってくれるの!」 「……男に恋したことはなかったけど、 お前なら付き合いたいって感じる」 今はそう返すので精一杯だ。 こんなに純粋に恋い慕う蒼宙を大事にしたいって、感じる。恋かどうかは分からなくても。 「じゃあ、キスしよ?」 ねだるのではなく、誘った。 こっちの方が好みだなと感じてしまう。 して、と言われてもしたかもしれないが。 「……っ」 噛みつくように口づける。 何度も啄んで放して、深く唇を重ねた。甘い吐息が聞こえる。 蒼宙は、青にしがみついていた。 青は蒼宙の肩を掴んで、キスを繰り返す。慣れているわけじゃない。 したかった。触れてみたかっただけ。 いつしか、自分も荒々しい息を紡ぎ出し、 キスに溺れていた。 (とっくに好きなのかもな) 深く口づけると、体温が伝わった。

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