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第38話 現実(リアル)に戻りたくない(✱✱✱)
浜辺ではしゃぐ姿を見ているのは楽しくて、自分にこんな感情があったのかと驚く。
四年の交際期間の中で、変わったものと変わらなかったものがある。
蒼宙の真っ直ぐな気持ちもだが、青も彼への持て余しそうな愛しさが高まる一方だった。
(蒼宙だけが特別だ。他のやつは、決して目に入らなかった)
四年も付き合ったご褒美とか言われて、良くない方向に考えた。
考えすぎと言うけれど、生まれとか関係なければもう少し呑気でいられた。
「まだ、水冷たいね」
手を繋ぎ歩く蒼宙が、青を見上げる。今日は3月10日。
春はまだ海水温も低い。
いきなり手を握りしめたら、きょとんとした。
「どうしたの。青は静かな姿も絵になるんだから」
遠くに見える人影。
こちらを見てもいないだろうと後ろから抱きしめた。
小柄な蒼宙はすっぽりと腕の中におさまる。
「バックハグだ」
「こういうの好きか?」
「正面から青の顔見えないしドキッとするよね。背が高いから見上げてるんだけど」
見下ろした蒼宙の顔は、あどけなさを残していて、
それでもあの頃のかわいい男の子ではない。
青が、少年ではないと言われたように。
時の流れに切なさを覚える。
手を引いて、身体を正面に向けさせる。
「じっと見られたら、どきどきするよ。前よりもっと。
14歳じゃなくて18歳の青なんだね」
「あんなことやこんなことも経験しながら、四年過ごしてきたんだろ」
含みを持たせてやると、ほほを赤らめた。
「ん。意味深だなあ」
「そう取ってくれていいけどな」
「……ん……ふぅ」
ぐ、と腕を引く。腰を抱いたら身体が浮いた。
そのままキスをする。
淡い口づけを繰り返して、次第に濃度を増したものへ。
舌を絡ませたら、蒼宙の身体が震え出した。
「お前、かわいい。壊したくなるくらい」
「……真性のSだよね」
「蒼宙にはふさわしい相手だろ」
抱えあげた蒼宙が、肩に頬を寄せる。
つま先が水に触れてひんやりとしていた。
背中を拳でノックされ、首筋にキスする。
刻印をつけている。
「大丈夫。痕は残さないから」
「蒼宙……そういうことしたら不味(まず)いことになるぞ」
「どう不味いの?」
悪戯に聞いてくるから、息もつけないキスで口を塞ぐ。
キスは何回交わしただろう。
何度しても足りない。
繋がってから抱き合う前の序章だと意識してしまうから。
互いに舌を吸う。
視界がぼやけてきたのか、青の背中にしがみついてきた。
「夢を見ていたい……このままずっと。
現実(リアル)に帰りたくないよ」
キスのせいで濡れているわけじゃない声。
髪を撫でて思いきり頭を抱いた。すとん、と降りた蒼宙が抱きついてくる。
「もう少し海を見ているか。それとも……」
「部屋に帰る。不安を忘れるくらい夢中にさせて」
指を絡める。
「……夢中にさせてやる」
「は……んっ」
裸で絡む時は正面からがいい。
顔が見えないのは嫌だ。感じてる顔を見ると気持ちが高ぶる。
肌がぶつかる音。
奥を穿つ。小刻みに腰を振りながら、
無我夢中で、愛をむさぼった。
押しつぶさないように、身体を傾けてキスをする。中の動きと連動させるように。
瞳からこぼれる涙は感じ入ってるからなのか。
繋がりが解ける時が悲しいのか。
分からないから、わけわからないほど乱したい。
外側から蒼宙の楔に触れた。
途端にびくっとなり、中がしまる。
「触っただけなのに?」
「あ、あ、もう少しゆっくり」
「無理」
腰を回す。素早く突いた。
弾んだ息。口からこぼれる滴。
腰が浮いている。
彼が応じている姿にやられた。
「……うらやましいな。そりゃ青は受けの方できないよ。こんなの持ってたら」
「こんなのって、これのこと?」
「……っ……はぁん……」
腰を押しつける。
よく分からないが、蒼宙を満足させられているならそれでいい。
キスをねだる時、瞼を閉じる。
これは四年間で知ったことだった。
あざと可愛い表情にいつもヤられてきた。
「一線越えちゃったら、欲張りになるね。
しないでいるの無理だもん」
「……そうかもな」
「指絡めてよ」
手を重ね指を絡める。
ぐ、と腰を引いて押し付けた。
「愛してるよ……俺の蒼宙」
「だめ……その声だけでイっちゃう!」
青も同じだった。
最奥で、怒張が暴れて吐き出した。
蒼宙、つま先と腕を弛緩させてベッドに沈んだ。
潤んだ瞳で、シーツを掴んでいる。
ゆっくりと抜け出す時、小さな悲鳴があがる。
「……やばすぎ」
横になって抱え込む。
胸の中に引き寄せた身体は、華奢で頼りなくも思えた。
己の欲望はまたはちきれんばかりになっている。
「硬いの当たってる」
口にするだけで触れてはこない。
蒼宙の手を導いて触れさせてみた。
「熱くてかたい」
ふいに撫でられてゾクッとする。
「これ、よく入るよね」
びくん、と脈を打つ。
腕を離させて横からつらぬく。
「ひっ……ああ」
「入るに決まってるだろ」
青自身を伝えるように、大きな動きを繰り返す。
汗がしたたり落ちてむせるようだ。暖房なんて必要もない。
顎を上げた蒼宙に、影を重ねる。
舞い降りるキス。
深くしなくても感じていた。
手を伸ばし、桃色の尖りをつまむ。
真っ昼間から愛欲をぶつける行為は、
あの時、冗談で言った背徳的そのものだ。
お互い、隠す物もなくベッドで乱れている。
ふと悪戯をやり返すことを思いついた。
「っ……、やだ……出て行っちゃ」
抜いたら、少し液体が飛んだ。かまわず膝を突いた。
「っ……ん……」
蒼宙自身を両手に包み擦り上げる。
いじらしく成長した彼の欲望を舌でかわいがればすすり泣く声がもれた。
指で先端を弾くと腰が後ろに揺れた。
両脚を開かせる。
ゴムの封を切り蒼宙自身に装着させた。愛しくて思わず口づける。軽いリップノイズがした。
「ん……っ」
必死で快感をこらえている。手のひらが力なくシーツに落ちていた。
先端からくびれを舌でなぞる。
「……蒼宙、思いきりかわいがってやるからな」
「やっあ……そんなことしながら言わないでよ」
抗う割に両脚をじたばたさせたのは何だろう。
ちろちろ、と舌で舐め吸う。
びくん、と跳ねた。
大きくなったソレを薄膜越しに唇と手で愛でる。
「僕が青にも……」
「駄目だ。お前にさせたくない」
されたくないのではなくさせたくなかった。
蒼宙のようなかわいさなんてどこにもなく、
少しでも嫌な思いをさせたくなかった。
「やさしい……っ……でも、お願い、それ以上は」
瞳から落ちる涙。
蒼宙の手を掴んで、唇から彼の昂ぶりを離した。
薄膜越しに白い液体が、溢れていた。
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