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第39話 車内の蜜事と、未来への憂い(✱✱✱)
卒業式から、一ヶ月の間に普通自動車免許を取得した。
自分で稼いだお金で買えないのなら、贈ってもらうべきではない。
藤城家が所有する車を使わせてもらおうと考え頼むことにした。
(それでも十分贅沢だけどな)
了承してもらえたから、仮免許の時から敷地内で運転の練習をしていた。
無事に免許は取れたが初心者マークをつけている時期に、
人を乗せて運転するつもりはなかった。
移動しなくても他の利用方法はあったのだけど。
高校を出たし、髪を黒く染めるのもやめ元の髪色で生活することにした。
目の色はカラコンをつけたままだ。
抱き合って眠ってもカラコンは決して外さなかった。
だから、蒼宙は未だに慣れてなくいちいち感動してよろこぶ。
「黒髪じゃないし、ブルーがいいよね」
「……お前の前だけな。外ではやっぱり目立つから」
「僕は無邪気に嬉しがってるけど、青は大変だもんね」
BMWの後部座席にもたれながら蒼宙が、微笑む。
「名前の由来だし、母と同じ色は嬉しかったんだけど、やっぱり変だからな」
「変じゃないよ。僕、ブルーの目の青に一目惚れしたんだからね」
ストレートな言葉に胸がつまる。
「それは初耳だ」
膝に抱き上げて耳もとで囁く。
「ひゃっ……フェロモン、恐ろしいよ」
「旅行楽しかったな。
来年は、この車で横浜へでも行こうか」
息をふきかけ舌で耳朶をなぞる。
衣服に手を差し入れ薄い胸板をなでた。
蒼宙は吐息混じりの声でなんとか応えた。
「……いきたいな」
「イキたい?」
「そ、そっちじゃない……」
口元に手を押し当てて堪えている。
いきなり、スラックスの中に手を入れた。
二回の行為を越えて敏感さを増している身体。
先端を長い指でいじればいい顔と声で鳴く。
「んん……ふっ」
「横浜の海も綺麗だろうな。お前を抱きながら、窓辺から見たいな」
耳の外から舌をそわせ、甘噛みした。
「や、そ、それってどういう……」
手早く身につける。
後ろから侵しはいったら悲鳴があがった。
「ひゃあ……!」
「海を見ながら窓辺で抱いてやるって言ってるんだよ」
下から突き上げる。
顎を上向かせてキスをした。
甘くて淫らなキスを。
膝に抱いて正面から突き上げる。
鋭く突き上げたら、肩に爪を立てられた。
「締めたな」
「ひゃ……だ、だめ」
肩に頬を寄せる。
蒼宙も腰を振っている。
焦れったくなって、スピードをあげたら
あっけなく陥落した。
興奮した証が飛び散る。
「ああ……後で掃除しとかなくちゃな」
「じゃあ車内はやめよ。そんな使い方しなくていいから」
「カーセックスもいいよな」
「エロエロ美男子になっちゃったな。
こないだは言えなかったのに、口にしてるし」
「医学用語でも使うしな。別に」
「カーとかつかないから……」
「息抜きになったしいいだろ。
気にすんな」
「腰にもまた当たってるし、性欲強すぎだよ」
「お前が目覚めさせたんだよな」
「中学の頃のあれが不健全だったのは認める」
「最高に可愛かったから惚れたんだよ。
知ってただろうが」
半端に脱ぐほうが、やらしかった。
試してみたかったことができたから、よしとする。
青は一ヶ月少しの間に変わったのを自覚していたが平然と受け入れている。
「……うん」
背中を撫でて抱きしめる。
普段は1人で運転を練習している車の中で、
愛の営みを楽しんだ。神戸旅行から二週間が経とうとしていた。
会ったのも二週間ぶりで溜まっていたのかもしれない。
「キスが苦いから気づいたよ……煙草吸ってるって」
シガレットケースの吸殻は片付けたが、キスで気づかれるとは。
「僕と、初体験した後からだよね。
それってさ……」
「欲を散らすため。煙草吸ってればごまかせる。身体は大人でも思考がガキなの自覚してる」
蒼宙は、青を抱きしめてきた。
「……しょうがない人だ」
「呆れるよな」
「青が寂しがり屋なのよーくわかった。一人では生きていけなさそう」
「一人にするのか」
ぽつり、漏れた言葉は優しいキスが封じた。
「しないから、二十歳になるまでは吸わないで。
お医者様になるのに身体壊しちゃだめ」
「分かった。ありがとう……俺の蒼宙」
「俺のって言われるの弱いの知ってるでしょ」
愛しくて悲しくて、こんな存在と離れる日が来たら人の愛し方なんて分からなくなる。
それだけは確信した。
煙草はそこまで執着してないし、今ならまだやめられるだろう。
「弱さは見せていいから。何年そばにいると思ってるの」
すがりつくように抱きしめた。
頬にキスをして愛を伝える。
「今を楽しもう。だからもう一回抱きたい……俺の部屋のベットで」
「……うん。めちゃくちゃにしていいよ」
青の身体に跨って腰を揺らす蒼宙。
色っぽくて愛しくて、また激しくしたくなる。
「はぅ……」
「おまえがほしい。俺のものにしたい」
「僕は青のものだよ……っ、ん」
ぐるり、腰を回したら、内壁がひくついた。
狭いナカはきつくて、それ故にもっと繋がりを深くしたくなる。
「また横浜デートで、煙草吸う青、見せてよ。
色っぽくてかっこいい僕だけの青を」
「……そう言われたら言う事聞かなきゃな」
くいっ、と手招く。
傾いだ身体を引き寄せてキスをした。
愛しくてしょうがないから、小さなキスを繰り返す。
「吸いたくなったらね。無理しなくていいから」
「ああ」
抱き合いながら、会話をするのも常だが決して集中していないわけではない。
身体は素直に反応しているし、表情と声で分かる。
艶を帯びた表情と声は情事の時特有のものだ。
「愛してる」
「ん。青を愛してるよ」
折り重なってきた身体。
指を繋いで果てを目指した。
熱を解放した身体は弛緩し眠りを求める。
青は眠る蒼宙の額に口づけた。
「……蒼宙」
眠る彼は目を覚まさない。
青の手も離さなかった。
大学に入学したら目まぐるしい忙しさだった。
会えない日々は、恋しさを募らせ
再会するとひたすら、お互いを貪った。
時間が合わせられない時は、電話でお互いを慰めた。
未成年喫煙をするより遥かにいい。
「あ……、んっ」
「お前の中で暴れてたくさん出したい」
言葉で攻めながら、自身を愛でる。
想像ではなく現実で蒼宙を抱きたい。
いつの間にかこんなにも欲深くなった。
濡れた音が受話器越しに聞こえ、吐息も弾んでいる。
崩れ落ちる時は一緒だった。
大学二年になり、秋を迎える。
蒼宙と青は二十歳になった。
約束の横浜デートの日が来た。
「ホテルのバーで飲む? 泊まるから運転しないし平気だぞ」
部屋について荷物を置いた後、蒼宙の髪を撫でながらささやいた。
「僕は、あんまり飲めないと思うけど
青に付き合う。ノンアルもあるし」
「まずは夕食の前に部屋の風呂に入るか」
「……何だか、獣(けだもの)の目をしてる」
蒼宙の指摘に口元をゆがめて笑った。
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