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第44話 クリスマスナイト(※※※)
お膳立てされた状況で、ほんの一ミリほど気恥ずかしさはある。
蒼宙が藤城邸に泊まるのは数ヶ月ぶりだった。
蒼宙が20歳の誕生日は、ラブホに泊まった。
男女だけが使う訳でもないし人に会わずに入って出られる。
青の誕生日は、藤城邸に招いてそのまま宿泊した。
「……歌ってくれるよね」
「仕方がないな。一曲だけだぞ」
二人でステージに上がる。
もう父は自室に引き下がっているし操子もいない。
静まりかえったホールには青と蒼宙の二人だけ。
蒼宙がマイクを握ると青はその細腰を抱いた。その時、身体に異変が起きた。
(やべぇ……俺としたことが。何でだ。こんなの初体験してから今まで一度も)
「席に座って歌おう。どうせ二人だけだし」
青は蒼宙を促す。
「じゃあこれ持っていくね」
蒼宙がカラオケの通信機器を持ったので、青はそれを受け取って自分で持つ。
「スマートだなあ」
蒼宙とともにテーブル席に戻った青は、少し椅子を離して座った。
「どうしちゃったの? さっきから様子が変だよ」
「離れといた方がお前のためだ」
蒼宙は、何だか苦しそうな声に首を傾げているようだ。
「とりあえず曲を選ぶねー。何がいいかな。
青はロック? ポップスとどっちが歌いやすい?」
「ちょっと貸せ」
蒼宙に断り通信機器を操作する。
「これにしよう」
流れ出したメロディーは、奇妙に妖しげで蒼宙を戸惑わせた。
青は構わず歌い始める。腰には触れず手を握った。
蒼宙は、青についてどうにか歌っているがキーが合わないようだ。
「意外とノリノリだった。しかも普通に上手いんですけど」
蒼宙は間奏の合間に感想を言った。
歌でごまかそうと必死だったが、無理だった。
どうにか蒼宙にはバレてないが。
「すまん。俺が勝手に入れてしまった」
「いやいや、一緒に住む前に好みが知れてよかったよ。
古い曲だからお父さんから教えてもらったのかな」
「父が歌ってるのを聞いたことがあるだけで、原曲は知らないんだ」
香水の名前がタイトルになっていて大人の色っぽい歌である。
ちなみに歌詞は一部変えて歌った。
(女とか余計だった)
「セクシーだったよ! パチバチパチ」
「今度はお前一人で歌ってくれ。結局、俺が歌いきったようなものだからな」
「……うん。青の歌も聞けたし唄うよ」
蒼宙は小学校の音楽の教科書に載っている動揺を歌った。
声が綺麗でどことなく色気もある。
歌う姿を見ていて照れてしまった。
「かわいい」
耐えきれず頬にキスをした。
「もー。何してんの」
「カラオケはもう終わりにして、客室へ行こうか。操子さんがベッドを整えてくれてるから」
もういいかとやけになる。
「青、お酒飲んでないよね? 顔が赤くて息も荒い気が……」
「限界だ。早くお前を食わせろ」
「きゃー」
素早く横抱きにする。ホールの扉を開けて二階に向かった。
「……っ、ま、まさか」
蒼宙は抱き上げられたことで、何か力強いものに触れた。熱く溶けだしそうなソレ。
「全部、お前のせいだ。俺が魔性化するのも全て蒼宙が、悪い」
客室の扉は長い足で蹴りあけた。幸い、丈夫なので壊れないのは分かっている。
開いた扉を後ろ手に閉めた。蒼宙はしっかり青の首に腕を絡めている。
(王子のそばにいるのがお姫様だからな)
ダブルベッドに愛しい身体を下ろす。
組み敷いて見下ろせば蒼宙の心臓の音が聞こえてきた。
タイを緩める。シュっという音が響く。
外したタイで蒼宙の手首を縛りベッドにくくりつけた。魔が差したのだ。
「極悪サンタに縛られたー! やらしい!」
「いい子にしてたお前にプレゼントやるよ。
ちょっと寝つけなくなるかもしれないな」
含み笑いをする。
本当に嫌がることならしない。
もちろん、きつく縛ったつもりはなく、蒼宙はノリノリで応じていた。
「蒼宙、今日のお前は一段と素敵だよ。パーティー来てくれてありがとう」
「……えへへ。極悪えろえろサンタさんに食べられに来たんだよ」
「お望み通り美味しくごちそうになろうか」
ぎしり。ベットが鳴る。
薄明かりの中、愛する恋人の扇情的な姿を見られすこぶる上下機嫌になった。
半ば覆い被さる格好で蒼宙の手首を拘束したタイを解き、頬にくちづける。
華奢な身を抱きしめたら吐息が聞こえた。
「つまんないなぁ。もう終わり?」
「痕が残ったら大変だろ。痛くないか?」
「大丈夫」
左右の頬に軽い口づけを落とされ、胸がキュンとなる。
受け身なだけじゃなくこちらをときめかせる行動もするから、彼は底知れない。
「愛してる。青がほしい」
脳髄までしびれた。
「お前用に用意したシャンメリーしか飲んでないよな」
「うん。ストレートに言っただけ」
「俺の方がもっとほしいんだよ」
首筋に噛みつく。最小限に歯を立てて甘噛みする。
「ん……」
鎖骨から下、腕の付け根を重点的に攻めた。
照明をつけたら赤い華が見えるだろう。
「あのね……胸の辺にもいっぱいキスして」
「了解」
薄い胸板を指でなぞりキスをする。
きつく吸い上げたら小さな息が漏れる。
ついでに尖りも口に含んで吸った。ちゃんと固くなる。
毎回、綺麗な体だと思う。
穢れなんて知らないような真白の肌。わ
がままが許されるなら、見える場所にもキスマークを残したい。
「僕はもう準備はできてるから、来ていいよ」
まだろくにキスもしていない。
張り詰めた場所が痛いほどだが、それでも。
「ん……ふぅ」
荒々しく舌を絡める。
脳に星が散るくらいしつこく濃いキスをした。フレンチキスは決して軽くない。
お互いの顎からは滴が伝い、淫らな水音は下腹部からも聞こえた。
手を伸ばすと蒼宙の下腹部も張り詰めていた。
青の凶悪なモノと触れ合っている。
身を起こし相手の衣服を全てぬがせる。青も全裸になりのしかかった。
躊躇いなく、彼の中に欲望を突き立てる。
初めて、アレを着け忘れた。
「……っ、ん……やぁ」
「じっとしてちゃもどかしいよな。たくさん突いてやる」
宣言し、狭い中をめちゃくちゃに突きまくる。
腕の下で喘ぐ蒼宙。
髪を撫でて唇を重ねた。
腰を振る。腹部に当たる焦熱は同じくらい興奮しているようだった。
それでもいじらしい主張だったが。
「今日は激しいね……」
「お前の腰に触って勃ったからなあ」
くすくすと笑いながら。
「はう……そ、そこ、いい」
「ここ?」
「あん……っ」
ぺろり。乳首を舐める。
浅い場所を擦ると奥がひくついた。
「青、愛してるよぅ」
「奇遇だな。俺もだ」
蒼宙の腕を引いて起き上がらせる。
膝に抱いて下から、焦熱を突き上げた。
肩に頬を寄せる。
「……はっ……ん」
「俺、上手くなったか」
「最初からテクニシャンだったけど……今じゃもう恐ろしいくらい」
ゆるやかから激しく、それを交互に繰り返し感じる声を確かめる。
「お前のおかげだな。愛の力だ」
きゅ、んとしまって青を閉じこめる。
同じ構造の身体のはずなのに、同じじゃない。
「もう、くさいんだから」
耳朶を噛んで息をふきかけた。
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