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第45話 クリスマスとお正月(※※※)

正面で抱き合う。 髪を撫で肌を愛でながら奥をついた。 「あん……っ、だ、だめ」 素早く揺する。 目を見開き口から唾液を零す様さえ 艶めいて見えた。 差し出された舌を吸う。お互いの唾液を飲み尽くすように啜る。 歯列をなぞる。 脳内に光が弾けては消える。 蒼宙の身体が傾いだ。ふわりと浮いたように見える。 仰け反るからだを抱きとめて、つながる部分に手で触れた。 高めの声を上げてのぼりつめる。 その隙に抜けでて欲を散らした。 呆れるくらい量が多い。 ゴムをつけて戻ってきて、再び覆い被さる。 両脚を開かせて、腰を押しつける。 ぐ、と最奥を貫いた。 枕の横のシーツを掴んだまま乱れる。 「ここも俺の部屋も防音だから、思いっきり声出していいんだぜ」 「はぅ……あっん……!」 息もつけぬ速度で揺さぶり内壁を擦る。 両脚を肩に担いで突き上げる。 みだらな水音が、響く。 肌を穿つパン、パンという音。 身体と心、両方が痺れていた。 「キスしてぇ……っ」 おねだりする声は吐息混じりで、聞いているとおかしくなりそうだ。 (オレは攻めるしかできない。それならば、意識が飛ぶくらい愛を与えたい) 「んん……っ」 薄くひらいた唇に舌を潜り込ませ絡めた。 緩急をつけて腰を揺する。 キスしたまま繋がりあって、 しばらくした頃、蒼宙はシーツに身体を沈ませた。 指先からつま先まで痙攣しているようだった。彼の分身を指で弾いたら、 声ともつかぬ喘ぎを漏らして果てを迎えた。 青は、薄膜越しに情熱を注ぎ込み隣に倒れ込む。 夜明け前気怠い身を起こす。 寝ぼけ眼でこちらを見つめている彼に気づく。 ベッドサイドのランプはつけたままだから、表情はよく見えた。 蒼宙が気取る前にゴムを身につける。 とっくに勢いを取り戻しているどころかさっきよりかたく大きい気すらする。 「失神しちゃった」 「それだけ感じてたんならうれしいけど」 蒼宙は、シーツの中で腰に触れる熱に気づいた。 「もう、平気だからあと一回」 ぐい、腕を引いて横から貫いた。 容赦なくガンガン突く。 そのたび、甘い声で鳴く。 「……あっ……ふぁ……奥、気持ちいい」 恍惚の中でふたたび意識を手放した。 またたっぷりと注いでそのまま腰に腕を絡める。 しばらく繋がったままでいたかった。 翌朝、朝の光の中背中を撫でていた。 「誘惑しないでね。逆らえないから」 「触れていたいだけだ」 髪を撫でる。 「お風呂は二人で? それとも別々?」 「愚問だ」 横抱きにして備え付けの浴室に連れ込む。 洗いっこし、触り合う。 キスをしたら、止まらなくてもう一度だけ繋がった。 達するまでが一回なら三回もした。 ベッドに戻り何事もなかったように服を着る。 青はこの部屋にこっそり着替えを持ち込んでいたし、蒼宙も着替えを持ってきていた。 二人とも服を着たら背中合わせに座った。 「藤城家の人間は性欲が強いんだって」 「ぐは……っ。ヤバすぎる」 「無体は強いたりしない。嫌なら断ってくれていいし」 「や、断んないよ。青が好きだから」 心の全部が持っていかれる。 「ふと思ったけど、心が乾くから相手を求めるんだろうか。他によすががないから」 「んー。そうだね。繋がりを求めてしまうのはあると思う。確かなものがそれしかないから」 震える声を聞いて背中を抱きしめた。 「でも青は特別じゃないかな。だって一緒にいたら、したくなっちゃうんでしょ。 性欲強すぎて」 ズバズバ言われても否定できない。 あれだけ寸止めしていたころが懐かしくすら思える。 「諦めてくれ。どうしようもない」 「心でも繋がってるから大丈夫」 愛しくなって、触れたくなる。 向かい合って啄むだけのキスをして微笑む。 「だーいすき」 「愛してる」 「僕とは四年目に結ばれたけど……青、未来ではどうなんだろう。一気に進んでたりしてね」 それはさすがに……と思いながら続きを聞いた。 「遊びとかじゃなくて本気でしか無理そう」 「当たり前だろ」 仮定の未来を今から言わないでほしい。 「終わっちゃったけどあらためて。メリークリスマス」 今更なことを言うから、額を小突いてやった。 「あれだけ甘く愛してくれたのに朝になった途端、意地悪」 「好きなやついじめるタイプってお前も言っただろ」 クスッと笑われた。 朝昼兼ねたブランチを取り蒼宙を部屋まで送った。 その後、家庭教師のバイトをして12月26日は終わった。 お正月を迎え、大学と家庭教師のバイトもなく少しだけ休息期間を手に入れた気分だった。 また忙しくなったら会える時間もなくなるからと、お互いの都合を合わせることにした。 昨日、電話で話したところだがクリスマス以降会えていない。 蒼宙も年末年始は実家で過ごしていた。 「新年会しない? クリスマス楽しかったし」 「イベントにかこつけて騒ぎたいだけなんだろ! 酒なら付き合うから人を巻き込むな」 一月二日、おせちをつまみながら父親がほざくので青は朝から疲れていた。 「青、むっつりしてるしつまんないんだよ。お酒は楽しく飲みたいんだ」 「むっつりじゃない」 「オープンの方だった?」 いけない。またペースに乗せられた。 「……用意も大変だから」 「私はお料理を頼んだりすればいいと思うんだけど…… 操子さんが作ってくれるって言うから」 「本当に世話になりっぱなしだな」 「運転手と、家政婦さんに来てもらえば十分だと思って人は増やすつもりないんだけど……」 「そうだな。俺が出ていったら負担も減るはずだ」 と言いつつ父も青も任せっぱなしではなく、料理もすることもあるし食器の片付けやできる範囲の家事もする。彼女は藤城家を守ってくれているのだ。 「うちで一緒に住んでもいいんだよ」 「……それは違うだろ」 少し寂しげな父親に唖然とする。 「冗談だけどね。青はもう帰ってこないでしょ……」 この先、二人暮らしが終わったとしても。 「……10年以内には戻る。それにお墓参りとか定期的には帰ってくるから」 「ここはいつだって青の居場所だからね。 つらかったら帰ってきていいよ」 気遣ってくれてるのか。 それでも甘えっぱなしはよくなかった。 自立して生きていけるようにならなければ。 一人になった時も独りではないんだから。 「お父様ありがとう」 「成人のお祝いはしたいな」 きりっとした目で見られ顔を背ける。 「そういうのもういいって」 「しばらく帰ってこないんだから、親孝行だと思って」 そう言われたら断れなかった。 3日後、蒼宙が遊びに来てくれたので詳細を話した。 明後日から大学が始まるので正月休みで会うのは今日が最後だ。 これから共に暮らせるから常に一緒で嬉しい。 「引越しの準備もあるのに」 「そんなに持ち出すものないでしょ。うちもそんなに広くないし」 蒼宙の住まいに転がり込めるだけでいい。 「当面の着替えや身の回りで必要な物だけ持っていくつもりだ」 「青のピアノが聞けなくなるの残念かも」 「お前はバイオリン持ってるだろ。防音だし聞かせてくれよ」 「うん。愛を込めて弾くね」 蒼宙にバイオリンの技術を授けたことにだけは、あの変態野郎に感謝しよう。

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