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第4話
それから真洋と巽 和将 のセフレ生活が始まった。
会うのは週に1回、金曜日の夜だ。
いつも通りレッスンの講師を終え、和将からの連絡を待つ。
(ふーん、真洋、アレが好みなのか)
面白くなさそうに呟いた、晶の言葉が何故か思い出される。
晶とセッションした日もそうだったが、どうやら晶は和将の事を気に入っていないらしい。
何故だと聞いても答えてくれず、好きにすれば、と冷たい言葉が返ってきただけだった。
(確かに、裏表がある奴だったけど)
晶は真洋の過去を知らない。けど、彼の態度はいつもの彼らしくなくて、不安になる。
真洋と晶の出会いは『А』だった。
晶はその頃から黒いロリィタ服ばかり着ていて、店内でとても目立っていた。
(何かもっさいのがいる)
そう声を掛けられて、お互い音楽を生業にしていると分かり、意気投合した。
それから5年。晶は真洋の好みに文句を言いつつも、からかっている程度だったのに、今回の和将に関してはそれすらしてこない。
(俺の事心配してる? ……まさかな)
そこで、メールの着信音が鳴る。
見ると予想通り、和将からのメールだった。
シンプルに時間と場所だけ本文に書かれており、確認した真洋はスマホをポケットにしまって、送られてきた場所へと向かう。
会う場所は大抵現地だ。帰る時もバラバラで、極力2人でいないようにしているように見える。
(そのクセやるときは、あんなにねちっこいのにな)
歩きながらそんな事を考える。
思わず下半身に熱が溜まりそうで、無理矢理思考を変えた。
賑やかな繁華街。ビルに取り付けられた巨大なスクリーンには、メンズ用化粧水のCMが流れている。
真洋はため息をついた。
賑やかな所は嫌いだ。見たくないもの、聞きたくないものが勝手に入ってくるから。
できるだけ俯いて歩くことに集中する。
こうすれば、多少なりとも不快な気持ちにはならずに済むからだ。
大通りから少し外れた所にくると、そこはもう、ホテル街の一角だ。
チラホラ人がいてすれ違うけれど、歩くことに集中しているおかげか、そんなに気まずくない。
目的のホテルに着くと、部屋番号の確認のためもう一度スマホを見る。
すると、迷惑メールフォルダの数が1件増えていることに気付き、読まずにそれを消去した。
部屋に着くと、インターホンを押す。
「お疲れ様」
「……っす」
迎え入れた和将は、テレビを見ていたらしい。先程巨大スクリーンで見たCMが流れている。
真洋はテレビを消した。
「よくこんなくだらないもの見れるのな」
「そう? 私は好きだけどね」
「あの世界に女はいねーよ。完全な男社会だ」
「まるで知っているような口ぶりだね」
「……さっさとやるぞ」
真洋は荷物を置くと、さっさと脱衣所に向かう。
大人しくついてきた和将は、真洋が服を脱ぐのを手伝い始めた。
「昔から男性アイドルが好きなんだ。ファンクラブにも入るくらいに。性指向もそっちだと気付いたきっかけにもなったしね」
「あんたの昔話には興味無い」
「つれないなぁ、もうちょっと私に興味もってよ」
真洋は興味が無いと言っているのに、毎回和将は何故か自分の事を話してくる。
歳、仕事、休日の過ごし方ーー本命になりたいから、自分の事を知って欲しいと、1人で語り出すのだ。
「真洋は? 何が好きなの?」
「あ……っ」
和将が真洋の首筋にキスをする。ビクリと跳ねた身体を抑えるように、和将はギュッと抱きしめてくる。
こうやって、和将は色々と真洋の事を聞いてくるが、真洋は頑なに答えようとはしなかった。
温かい体温に、首筋の濡れた感触に、真洋の理性は蕩けていく。
「ここも感じる?」
鎖骨を舌でなぞられて、ゾクゾクと何かが這い上がった。
ジーパンの上から脚の間を撫でられて、甘い吐息が真洋の口から零れる。
(くそ、何でこんなに上手いんだよ)
セフレと言うからには、お互いセックスを楽しむ関係でいたいのだが、毎回真洋は和将に翻弄されっぱなしだ。
和将はクスリと笑う。
「真洋が何が好きなのかは分からないけど、どこを触られるのが好きなのかは分かるよ」
「……っ!」
耳たぶをかじられ、足から崩れ落ちそうになった。
「音楽やってるだけあって、敏感だね」
「それとこれとは、別の話だろ……っ」
真洋は和将のジャケットをすがるように掴むと、彼は動きを止めて真洋を見た。
「キスしていい?」
「……それはしない約束だろ」
俺たちはセフレだ、余計な事はしなくてもいいだろ、と真洋は和将のジャケットを脱がす。
「強情だなぁ、好きなくせに」
「……いいから服を脱げ」
真洋は自分の服を全て脱ぐと、一足先に浴室に入った。
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