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第22話

「おはよう、真洋」 次の日、真洋は和将の声で起こされた。 「ん……あれ?」 もうそんな時間か、と起き上がると、ある事に気付いて真洋は和将に尋ねる。 真洋は眠りは深い方だが、ベッドに人が入って来たかは分かる。 「アンタはどこで寝たんだ?」 「ん? それより、朝食はどうする?」 真洋は時計を見ると、食べている時間は無かった。 「移動しながら食うわ。どこかのコンビニ寄ってくれるとありがたい」 喋りながら準備を始めると、和将は分かった、と部屋を出ていく。昨日の服が洗濯乾燥されて脇に置いてあったので、どこまで甲斐甲斐しいのか、と少し申し訳なくなる。 (しかも、どこで寝たかアイツ、誤魔化したし) 突っ込んで聞く時間も無いし、今日の仕事が終われば話ができるだろう、と真洋は着替えてリビングへ行く。 「じゃあ行こうか」 すると和将の方も準備万端だった。しかし、手には何やら袋をぶら下げている。 「それ何だ?」 「朝食だよ。もう出ないと。早く行こう」 ニコニコと返す和将は楽しそうだ。家を出て車に乗り込むと、その朝食を食べるように言われる。 中身を確認すると、サンドイッチと水筒が入っていた。 「もしかして手作りか?」 「そうだよ、召し上がれ」 これの為に真洋より早起きして作ったのなら、嬉しいよりも申し訳なさが勝ってしまう。 「昨日からやけに甲斐甲斐しいな」 それでも、ありがたくサンドイッチを頬張ると、ハムとマヨネーズの塩気が身体に沁みた。 セフレの時からも思ったが、意地悪な発言こそするけども、基本的には優しい和将。本人はドライな人間だったと言っていたが、それは彼のセクシャリティが関係しているのかもしれない。 真洋にも、覚えがある感覚だ。晶と同じく露悪的に振舞っているが、光との件があってから、素直になれないでいる。 「……美味い」 ぼそりと呟くと、和将は運転席でクスリと笑う。 「それは良かった」 不覚にも、その横顔がかっこよくてキュンとしてしまう。 (そういえば、最初は顔が超好みだったんだよなぁ) サンドイッチを食べながらチラリと和将を見ると、改めて好きな顔だと思う。目鼻立ちがハッキリしていて、モデルと言われても違和感ない。 「真洋」 「ん?」 「穴が開きそうだからそんなに見ないで」 「……」 真洋は慌てて視線を逸らす。見惚れてたなんて、自分でも恥ずかしい。 サンドイッチとコーヒーを流し込んだところで、車は目的地に着いた。礼を言って車を降りると、ちょうど晶も来たところだった。 「晶、おはよう」 「おはようじゃない。昨日メールしたのに無視しやがって」 プンスカ怒る晶はスタスタと歩いていく。今日はヤケに高いヒール靴をはいているのに、よく転ばないなと思った。 「どこ行ってた? お前、俺1人に任せた責任取ってくれるんだろーな?」 「悪かったよ。実は、和将の所に行ってて。メールもまだ確認してない。ホントごめん」 どういう訳か、晶の方が背が低いのに、真洋は追いつくのがやっとだ。 「和将だぁ?」 通された控え室に入ると、晶はやっとこちらを向く。 「アイツの所に何の用事だよ」 「告白しに。そしたら甲斐甲斐しく世話された」 「ノロケはいい……アイツはやめとけって言ったのに」 後半晶が何を言ったのか聞こえず聞き返すが、彼は何でもないと話題を変える。 「メールの件は、菅野ってヤツ知ってるか?」 真洋はドキリとした。当たり前だが、芸能界に戻れば当時いた人の名前も聞くだろうに、すっかり忘れていた。うなずくと、晶は話し出す。 「お前の事、応援してるってさ。直接言えよって言ったら、合わす顔がないからと。元々、お前のマネージャー希望だったらしいな」 「そうだったのか……」 それなら、多少今更感があるけども、最後に謝られた意味が分かった。 「それから、これから忙しくなるぞ。昨日俺一人にした覚悟、できてるんだろーな」 晶は口を尖らせる。どうやら現役社長はとてもやり手らしい。一体どういう手で仕事を取ってきたのか、怖いので聞かないでおく。 「じゃ、準備するぞ」 「お、おう……」 やはり晶には、敵わないなと思った真洋だった。

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