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第3話

「神くん、優しいんだね」  空は、雅臣の手を取った。  冷たく、乾いた手だった。  その途端、空の手を長田が払った。 「汚い手で馴れ馴れしく触るんじゃない!」  そんな長田の剣幕に、空の瞳は元の虚ろな色に戻ってしまった。  驚いた風の雅臣に、長田は言い訳のように説明する。 「小室 空は、オメガなんです。校内一の、堕落したオメガ」  オメガ、か。  雅臣は、ならば長田の態度も仕方ないか、と考えた。  長田も、雅臣と同じアルファだ。  オメガを毛嫌いするアルファが、時には存在する。  雅臣は、アルファの父と母を持つ、サラブレッドだった。  国内でも有数の資産を誇る、神一族。  その嫡男として生まれた。  幼いころから英才教育を施され、限られた人間しか入学を許されない優秀な学校に通っている。  15歳のこの冬に、一か月間だけ地元の公立中学校へ編入することになったのは、今のうちに下々の営みを見て社会勉強を、という父の意向だった。  アルファ、ベータ、オメガの入り混じった教室は、雅臣にとって興味深いものだった。  そして、そんな中で過ごすうちに、オメガは差別されていることが多い、との事実に行き当たった。  雅臣の暮らす屋敷にも、オメガの使用人はいる。  しかし、ここまで露骨に虐げられている姿を見るのは初めてだった。

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