6 / 8

第6話

―10分ぐらいたった。 「それでですね~あの時の……」 「へ、へぇ。」 さっき会ったこは波音さんっていうらしい。可愛い名前やな。でもめっちゃオタク気質でさっきからずっと俺らの配信についてのレビューをしてくれてるんや。ありがたいけどそれは柚葵の方に伝えたらめっちゃ喜ぶで?だってあいつめっちゃファンの事大事にしてくれてるんで? 「ハルさんはユズさんの事、好きですか?」 「ふは?ああ、ユズの事は……信頼しとるよ。こんな俺でも面倒見てくれてるし。」 「きゅー!最高です。ああ、今日まで生きててよかった~。じゃあハルさんの時間もあるし私はこれでお暇します。今日はありがとうございました!今度会う時は配信で会いましょう!」 「ほなな。また配信でな。」 「はい!」 最後の最後まで礼儀正しい良い子だったなぁ。あんな子は今まで初めてや。帰ったら柚葵にも報告せなあかんね。 「じゃあ、俺も帰るとしましょか。」 土産で柚葵が喜ぶ顔が目に浮かぶわぁ。帰ってからの反応が楽しみや。 ―柚葵side 「あのさ、なんでこの子は電話にもLineにも反応しないわけ?」 あれから遥の行きそうな場所をくまなく探したがいない。どこにもいない。遥の周りの人間にも声をかけたけど『見ていない』の一点張り。まったく、どこに家出したものか。 半ばあきらめて家に帰ってみるとやっぱり帰ってなくて。確かにあの一件から少し仲が深まったけどなんですぐトラブルが来るのかな。神は俺たちをもてあそぶぐらい暇なのか? 「はぁ。今日の合コン、面倒だったな……今度からなんて断ろう。」 別に遥との予定がある、とでも行っておけば何とでもなるがその遥がいないんだから別の言い訳を考えないといけない。それも面倒になってきたな。 「風呂、入るか。」 このまま何もせずに遥から連絡が入ってくるのを待っているのも時間の無駄に感じた。 (久しぶりだな……この家に俺しかいないのって) 大学に入ってからは確かに遥と同棲している。まぁ、一軒家だから二人までなら何とかなる。4人は……ちょっときついかな? 「はぁ~風呂って偉大。かなり偉大!」 遥がいないってだけで他は何も変わってないはずなのにどうしてこんなに心が仕事をしないんだろう。しかも変なテンションの上がり方してるし。 「あ、そういえば……」 風呂の中で一人言を言っても何も言われないことにやっぱり違和感が。よかった。ちゃんと違和感が仕事してる。心は仕事してないけど。 「あったあった。この前遥が絶対使うなって言ってたシャンプー。使ってみたかったんだよね」 全裸になって何をするかと思えば風呂の中を模索って……と思ったその君!ダメって言われたら使いたくなるじゃん。これが人間の本分だもん!

ともだちにシェアしよう!