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犯人は誰だ!? 雪哉SIDE ②
てっきり体育館の裏手かどこかで話をするものだとばかり思っていたのに、彼女は体育館を横切り現在はあまり使用される事のない旧校舎のほうへと進んでいく。
古い建物にはいくつかの扉が備え付けてあり現在は用具倉庫として使用されているが、一昔前はここに運動部の部室があったと噂される区画で、彼女が足を止めたのは、消えかけたネームプレートに「バスケ部」と記された一室だった。
こんなところで話とは一体なんなのだろう?
不思議に思いながらも促されてドアを開けると、湿った空気が頬を撫でた。中は薄暗くてよく見えない。
「よぉ、萩原。よく来たな。待ちくたびれたよ」
「!?」
薄暗い部屋の中には見覚えのない、けれど自分と同じ部から支給されたジャージを着た大柄な男が一人腕を組んで立っていた。ニヤニヤする男を見て、嫌な予感がした時にはもう遅かった。
強引に腕を掴まれて部屋に引きずり込まれる。
「ちょっ! ……これはっ!?」
いきなり埃くさい床に押し倒されて動けないようにのしかかられた。
開いたドアの向こうに真っ青な顔をした彼女の姿が見える。両手で口を覆い、ふるふると頭を左右に振っていた。
「ごめん……ごめんね、萩原君」
ドアが閉じられる瞬間、彼女の泣きそうな顔が見えた。走り去る足音が空虚に耳に響く。
信じられない……。
「ちょっと待って! これ、どういうことっ!?」
何が起こっているのか理解出来ないながらも、押さえつけてくる男の湿った手が気持ち悪くて何とか逃れようともがいた。
「まぁそんなデカい声出すなよ。俺がここにお前を連れてくるよう仕向けたんだ」
「意味がわからない。なんでこんな回りくどい事するんだっ! あんた誰なんですか!」
同じジャージを着ているという事は恐らくバスケ部員なのだろうが、話したことはない。ただ、記憶にも残らない存在だったと言うことかもしれないが。
「フン、威勢がいいな。先輩に対する言葉遣いがなってないんじゃねぇか?」
こんな状態で敬語もクソもあったもんじゃない! 至近距離で顔にかかる荒い鼻息が生々しくて気持ち悪い。
両手首を床に縫いとめられ、逃げられないように両足の間に大きな体が滑り込んでくる。
「お前が、俺の言うとおりにしてくれるってんならこのまま解放してやるよ。逆らったらどうなるかは……わかるよな?」
男は嘲笑うように雪哉の姿をじっと見下ろしながら頬に触れた。
ニヤニヤと笑うその視線が気持ち悪くて虫唾が走る。雪哉も今のこの状況が読めないほどバカではないつもりだ。この男がどうせろくでもない事を要求してくるのだろうという事は容易に想像がついた。
「で? こんなことしてまで、僕に何の用が?」
「……フン、生意気な面だ。まぁいい。単刀直入に言ってやる。お前、レギュラーから降りろ。目障りなんだよ。好きになる女みんなお前の方がいいって言うし」
「……」
やっぱそうきたか。薄々そんな話じゃないかとは思っていた。去年も似たようなことを先輩に言われたことがあったし、小さないやがらせなら日常茶飯事なので対して気にも止めていなかったが、直接こうして言われると腹が立ってくる。ましてや女絡みの嫉妬なんて見苦しすぎて反吐が出そうだ。
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