76 / 152

犯人は誰だ!? 雪哉SIDE

「おい、萩原。お客さんだぞ」 「え?」  ストレッチを済ませ、ボールの感触を確かめていると、不意に大久保から声を掛けられた。  なんだろうと思って近づいていくと、同じ2年の色のタイを付けた少女がジッとこちらをみているのが確認できた。  顔は見た事あるような気もするが、名前までは知らない。大人しそうな娘だ。可憐という言葉が似合いそうな、何処か儚げな空気感を漂わせている。  そんな彼女が自分に何の用だろう? 「……ちょっと、二人きりで話せないかな?」 「えっと、部活がもう始まっちゃうから手短にお願いしたいんだけど……此処では出来ない話?」  訊ねると、彼女はこくりと頷く。今は少しでも時間が惜しい。でも、わざわざこうして訪ねてきたという事は余程の事なんだろうか? 「出来れば、今がいいの……。だめ、かな?」  そう言って彼女は視線を泳がせた。そわそわと落ち着かず、何かに怯えるような仕草に違和感を感じて雪哉は首を傾げる。  彼女はそれっきり口を閉ざしてしまったが、その顔色が青白く見えて思わず息を吞んだ。  告白、の類だろうか? こんな今にも倒れてしまいそうな子を断るなんて、ちょっと良心が痛む。 「なんだ? また告白か? 行って来いよ。監督には適当に言っておくから」  大久保に背中を押され、雪哉は益々戸惑いを覚えた。 まるで、早く行けと言わんばかりの大久保の態度に眉を寄せる。  何だか違和感を感じるが、それが何なのか検討が付かない。 「……じゃぁ、少しだけならいいよ。すぐ済むんでしょう?」 「……」  彼女は答えなかった。俯いて、ほんの少し震えているような気もする。緊張しているのだろうか? 仕方なく、ボールを床に置くと雪哉は体育館をこっそり抜け出して彼女の後をついていく事にした。

ともだちにシェアしよう!