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犯人は誰だ!? 雪哉SIDE ④
ガンッ
突然、薄暗かった室内に光が差して、大きな音が響き渡った。
雪哉の上に乗っていた男が驚いて飛び退る。
「……ずいぶん楽しそうな事してんじゃねぇか」
地を這うような低い声に、周囲の空気がピンと張りつめるのがわかった。
男は入ってきた人物を見て血相を変え、慌てて衣服を整えて顔を引きつらせる。
「た、橘……なんでここに……」
「あ? てめぇに教えてやる義理はねぇよ」
ちらりと雪哉の姿を見て、橘の顔から張り付かせていた笑顔が消えた。
「てめぇ……マジでぶん殴るぞ、いや殺す!」
「ひっ……橘ちょっ、落ち着けって……」
仮面のように冷たい表情からは何の感情も読み取れない。だが、全身から立ち上る殺気が彼の怒りを雄弁に語っていた。
これはまずい。絶対にまずい気がする。
今まで散々、殴るだの犯すだの恐ろしい言葉を言われて来たが、言葉の重みが全然違う。
橘は男の髪を無造作に掴かんで今にも殴りつけようとしてる。暴力の衝動を感じとって、雪哉が後ろから橘の背に縋って叫んだ。
「先輩、待って!!!! 僕なら大丈夫だから!」
「……っ」
橘はゆっくりと振り向くと、殴られて腫れかけた雪哉の顔を見てわずかに表情を歪めた。
「こんなことで、暴力なんて振るったら今までの努力が全部パアですよ? こんな奴の為に先輩が試合に出られなくなるなんて、僕、絶対に嫌です。ウインターカップ行くんでしょう!? 僕なら平気です、……だから、もう止めて下さい!」
なんとかこの場を収めたくて言葉を紡ぐと、橘は男を人形でも投げ捨てるように突き飛ばし苛立たしげに舌打ちをした。行き場を無くした拳を強く握りしめ、唇を強く噛む。
「……くそっ!!!」
ドカッという鈍い音が響き、壁にわずかだがヒビが入る。
息を吸うのも億劫になるほど重たい空気が居た堪れなくて、思わず息を吞んだ。
「先輩、あの……」
「……いいから、早くを服着ろ」
言われて初めて、下半身丸出しの自分の状態に気付いた。
雪哉がせわしなくズボンを身に着けている間、橘はずっと男を睨みつけていた。さっきまで偉そうにしていたのに、一言も発することが出来ずに怯える姿がなんとなく可笑しい。
まるで蛇に睨まれた蛙状態だ。
「たく、モタモタすんな! 着替えぐらいさっさと済ませろ」
「あ、はいっすみません! もう大丈夫です」
「よし。行くぞ」
橘は一度、苛立たしげに男を睨みつけチッと舌打ちを一つすると、雪哉の肩を引き寄せて部屋を出た。
オレンジ色に光る照明をまともに見てしまい目が痛む。
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