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切ない思い ⑧

 翌日の天気は晴れ。雲一つない青空が視界いっぱいに広がっている。   良かった、今日は思っていたよりも寒くは無いらしい。  と、言うか、……この組み合わせはなんなのだろう。  商店街を嬉々として歩く和樹達の後ろ姿を少し離れたところから眺め、雪哉はどうしてこうなったのかと眉間に手を当てて小さくため息を吐いた。  拓海の横にはさも当然のように途中で合流した加治が居て、二人で楽しそうに話しながらお土産を眺めては談笑している。  そして、和樹の隣には何故か増田の姿。  昨日、告白してフられたばかりの二人には到底思えないような仲の良さで、あーでもない、こーでもないと笑っている。  昨夜、確かに告白していた所を目撃した。   なのに、どうしてフラれた相手と普通に話が出来るのだろう?  自分は、襲ってしまった負い目もあって拓海とまともに話せるようになるのに随分かかったと言うのに昨日の今日でいつもと変わらず接している二人が不思議でならない。  と言うより、何故自分のグループには教師が二人も紛れ込んでいるんだ。  ツッコミどころが在りすぎて色々と処理が追い付かない。  もしかして、昨日のアレは別人だったのだろうか? いやいや、確かにあれは和樹だったはずだ。  ジッと二人の姿を追っていると、視線に気付いた和樹がくるりと振り返って笑った。 「なに一人で怖い顔してんだよ。来いよ雪哉、一緒に試食しねぇ?」 「あぁ、うん」  やっぱりいつもと変わらない。 「……なになに? 俺の顔になんかついてる? あ、さっき食った八つ橋かな」  そう言って、和樹が頬を服の袖でごしごしと擦る。 「別に、何も付いてないよ」 「えー、じゃぁなんだよ。あ……もしかして、俺に惚れちゃった?」 「何言ってんだ、ばか」 「ひどっ、たく……ノリ悪いなぁ雪哉は」 「僕がノリノリだったことなんて一度もないでしょ」 「じゃぁなんで、さっきから俺の方ばっか見てんだよ?」 「それは……っ」  和樹の質問に言葉がすぐに出てこなかった。一瞬、増田とバチっと目が合って何と言えばいいのかわからなくなる。 「あ、あー……俺、他の所の見回りに行ってくるよ」  また、後で。なんて言いながら白々しいタイミングで増田がその場を離れる。  と、言うかまた後で合流する気なんだ。  しかも、加治は拓海にべったりで仕事放棄しまくってるし。教師がそんなのでいいんだろうか?  和樹が、ほんの一瞬だけ寂しそうな表情で増田を見ていたのを雪哉は見逃さなかった。  直ぐにまたいつもの顔に戻って居たのでわかり辛くはあったけれど、やはり昨日のアレは和樹で間違いなかったのだと確信した。 「雪哉、どうした? なんか変だぞお前……」 「そう? 取り合えずさ、そこのカフェ行かない? 僕、ちょっと甘いものが食べたくなっちゃった」 「ん、おぉ……」  丁度、お洒落なカフェがあったので顎で指すと和樹は空気を読んだのかこくりと頷く。  そこに居るバカップルたちは置いていこうと言う話になって、相変わらず二人の世界に入っている拓海たちに一声かけてからお洒落なカフェに入った。 古民家風の外観をくぐると、中はすっきりとした大人モダンな雰囲気の店だった。店内には抹茶のいい香りが漂っていて、一つ一つの内装にも拘りが感じられ多くの女性客で賑わっていた。  どうやら、インスタで大人気だとかで店内には女子の割合の方が多い。 男二人で入るには少々敷居が高かっただろうか? 一瞬そんな考えも頭を過ったが和樹は特に気にすることなくズンズンと進んでいく。 出来るだけ人気の少ない奥の席を選びメニュー表を開くと、美しい写真の数々に目を奪われた。流石京都だ、抹茶系のメニューが多い。そして、どれも美味しそうに見える。 散々悩んだ挙句、和樹が抹茶パフェで自分は抹茶のティラミスをチョイスした。

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