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切ない思い ⑬
自分は、なんて馬鹿な事を言ってしまったのだろう。
薄暗い部屋の中、先ほどのやり取りを思い出して思わず深い溜息が洩れた。
せっかく拓海が歩み寄ってくれたのに、意地悪な事を言ってしまった。
あんな事言うつもりじゃなかったのに。自分の心は随分狭かったのだと今更ながらに驚かせられる。
今日、清水寺や地主神社に行きたいと言い出したのも、結局は雪哉の為だった。
雪哉があまりにも頑なに自分の気持ちを押し殺そうとしているから、友人として背中を押してやりたかったのだろう。
よくよく考えれば、行きの新幹線の中でも拓海は雪哉の気持ちになんとか歩み寄ろうとしてくれていた。
それらを全て拒絶しているのは雪哉の方だ。
いくら親友でも触れてほしくないデリケートな部分があるのだと何故、理解してもらえないのだろう?
なんとなく一緒の部屋は気まずかったのか、部屋に戻ると直ぐに和樹と拓海は何処かへ行ってしまった。
今頃は、加治たちと仲良くやっているのかもしれない。
明日は京都を出て修学旅行最後の地大阪へと移動する予定になっている。 早く寝てしまおう。と思ってみてもまったく眠れない。目を閉じても、拓海の顔が浮かんで離れず何度も寝返りを打ってしまう。
こんなはずじゃ、なかったのに……。
「――はぁ」
再び吐いたため息が部屋に響く。
「……ユキ。もう、寝た?」
トントン、と戸を叩く音がして思わずごくりと喉が鳴った。まだ、考えが纏まっていないうちに拓海と話すのは得策ではない。
これ以上関係が拗れてしまったら、友情にまでひびが入ってしまう気がする。
また、同じことを繰り返して拓海を傷つけてしまうかもしれない。
それだけは避けたかった。
今の心理状態では拓海の事を気遣う余裕なんてないし堂々巡りになってしまう位なら居留守を使った方がいいかもしれない。
って、此処はホテルの一室で、拓海も和樹もルームキーをそれぞれ持っているじゃないか!
雪哉が返事をしないでいると、かちゃりとロックを解除する音が鳴り響いた。
部屋のドアが開いて一筋の光が薄暗い部屋に差し込んでくる。
ゆっくりと近づいてくる気配に驚いて、反射的に雪哉は布団を目深に被りぎゅっと目を閉じる。
寝たふりしてどうするんだよ!! と、自分の中でツッコミを入れるものの、今更起き上がるのも間抜けな気がして息を顰めて拓海の動向を伺った。
人の気配は真っすぐにこちらに近づいて来て、雪哉の背後でぴたりと止まった。
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