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卒業…… 4

「いいのかよ? 追いかけないで……」  懸命に涙を堪えていると橘とは入れ違いで和樹が入ってきた。一体何処から会話を聞いていたのかはわからないが複雑な表情をして雪哉を見上げている。 「いい。……わかってた事だったし……ていうか、立ち聞き? 趣味悪いよ」 「強がり言っちゃって。雪哉の顔に、先輩と離れたくないって書いてあるよ」 「……ッ」 腕を引き、和樹の懐深く抱き込まれる。一瞬何が起こったのかわからずに身じろいだものの優しい感触に、溜め込んでいた感情が堰を切って溢れだした。 「……しょうがないだろ。……僕は、橘先輩に迷惑かけたくないから……っ!」 橘が卒業したら二人の関係は終わる。それは最初からわかっていた事だ。 橘の本心がわからない以上、延長してくださいなんて、ムシのいい事言えるはずがない。 「なんで僕、年下なのかな……どうしてあの人……先輩なんだよ……」 無茶な願いだとわかっている。それでも言葉にせずにはいられなかった。 右手でしっかりと橘のボタンを握りしめながら、とめどなく流れる涙を和樹の胸に顔を押し付けて拭う。 「ごめっ……和樹……今だけ……こうしてて……」 直ぐにいつもの自分に戻るから、今だけは――。 「……雪哉……」 和樹はそれ以上何も言わなかった。ただ、黙ったまま雪哉が落ち着くまでゆっくりと背中を擦っていた。

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