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卒業……3

「悪い。俺、もう行くわ……。半年って案外短いもんなんだな……」  ほんの一瞬寂しそうな表情をして、そう呟いた橘は名残惜しそうに雪哉の髪をひと撫でするとそのおでこに触れるだけのキスを落とした。 「お前といるの結構楽しかった。萩原ならもう俺が居なくても大丈夫だろ」 「……っ」  全然大丈夫なんかじゃない。  行かないで、ずっと側に居て欲しい。そう、言いたいけれど言葉が詰まって出てこない。  言ってしまえば橘を困らせるのはわかっているから。  これ以上困らせてはいけない。  張りつめていた心が切れそうだ。足の力が抜けそうになり、雪哉はなんとか踏みとどまる。  言いたい言葉を全て吞みこんで、雪哉は無理やり作った笑顔を橘に向けた。 「橘先輩。今まで……ありがとうございました。……僕、……絶対に来年インハイ行くから……っ、橘先輩達が叶えられなかった夢、絶対に叶えるから。だから、……たまには、遊びに来てください。みんなで待ってるから……」 「……バーカ。そんな、泣きそうな面して偉そうな事言ってんなよ。お前だけじゃ心配だから、当然扱きに行くに決まってんだろ?」  くしゃくしゃっと頭を掻き回し、橘はじゃぁ、またな。と言って出て行ってしまった。  別れと言う現実が改めてゆっくりと頭に染み渡って、目の前が真っ暗になってゆく……。

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