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強化合宿は波乱の予感⑤

 雪哉の背中に橘の体がピッタリとくっついて、ドクンドクンと早鐘を打つ心臓の音が伝わってしまいそうで落ち着かない。  しかも最悪な事に何を思ったのか、そのまま橘の手がするすると下に降りていき、ズボン越しに雪哉の太腿をいやらしい手つきで撫でてきた。 「……っ、ぁ……っ」    たったそれだけの事なのに、ビクっと身体が震えてしまう。橘の指先が触れたところからじわじわと熱を帯びていくようで、全身に甘い痺れが広がっていくのを感じる。 このままではまずい。 そう思って必死に抵抗を試みるが、橘の指先は大胆にも雪哉の股間をまさぐり始めた。ぎょっとして腰を引こうとするが余計に橘に腰を押し付けるような格好になってしまう。 「ん……ぅ、……っ」 布地の上からもどかしい刺激を与えられて、徐々にそこが硬くなっていくのがわかる。 「なんだ……やっぱり、勃ってんじゃん」 揶揄するような笑みを含んだ声で指摘されて、恥ずかしくて死にそうだった。 「な……違……っ」 「嘘つくなよ」 「うそじゃな……あっ」 「ほら、もうこんなになってる」 橘の指先が先端をグリッと擦り、雪哉の口から上擦った声が洩れる。 「や、やだ……っ」 「ヤダじゃないだろ?」 「ぁ……っ」 耳たぶを食まれながら甘く低く囁かれて、頭の芯がじんと痺れた。 「パンツの中グッチョグチョじゃね? ほら、こんなに濡れてるぞ」 と意地悪く笑いながら、ズボンの中に手を差し込み、下着の上から先走りを塗り広げるように陰茎を揉み込まれる。 「や……っ、……言わないで……っ」 直接触れられていないのに、自分で慰める時よりも遥かに強い快感が押し寄せてきて、腰が抜けそうになる。 下着の中でぬちゃりと粘着質な水音が鳴るのが聞こえて、羞恥で涙が出そうになった。 こんな所でこんな事をされているのに、気持ち良くなってしまっている自分への情けなさと、橘の指の動きに翻弄される気持ち良さとがごっちゃになって、雪哉は混乱した。 「和樹の声聞いてパンツびしょびしょにして……こういう事には興味ありませんって顔してるくせに……やらしーな」 「ぁ……や……っ」  息を吹き込むように囁きながら耳の穴に舌を差し込まれ、ぴちゃ、と湿った音が鼓膜に直接響く。  橘の荒い息遣いがすぐ傍で聞こえて、なんだか余計に変な気分になってくる。  橘の熱い吐息が触れる度、ぞくりとした快感が全身を駆け巡る。 「……っやめ……て下さい」  雪哉は羞恥で頬を染めながら、橘を睨みつけた。  その瞳は涙目になり、上気した顔は橘の情欲を誘うには充分すぎるほどだ。  橘はゴクリと唾を飲み込んだ。 「そんな目で見んな。誘ってんの?」 「……ち、ちが……っ誘ってなんか……っ」 「声出すなよ。和樹にバレたら困るのはお前だろ」  バレたら困るのは橘も同じじゃないか。と、言ってやりたかったけれど、声にならなかった。口を開けばはしたない声を上げてしまいそうで、慌てて自分の口を手で押さえる。 橘は雪哉の抵抗など全く意に介さず、そのまま雪哉の体を反転させると、壁に押しつけ唇を重ねてきた。  強引に割り込んできた熱い舌が歯列を割って口腔内に侵入してくる。  逃れようと顔を逸らしてもすぐに追いつかれ絡め取られてしまう。 「ん……ふ、……っん、まっ、ん……っ」  角度を変えて何度も深く貪られ、飲み込みきれない唾液が顎に伝う。  苦しい……けど、どうしよう……気持ちいい。酸素を求めて僅かに開いた隙間から再び熱い塊が入り込んで来る。  くちゅ、と音を立てて舌を吸われ、甘い痺れが体中に広がっていく。  こんなの、ダメなのに……。今すぐ止めなくちゃ……。頭ではそうわかっているのに、抗えない快楽に思考回路まで溶かされていくようだ。 「ん……っは、ぁ……んんっ」 「……っは、エロい声出しやがって」  ようやく解放された頃にはもうすっかり腰が抜けてしまっていた。崩れ落ちそうになる雪哉の体を、橘がすかさず支える。 「大丈夫かよ、足震えてるぞ。可愛いな」 「っ、誰のせいだと……っ」  雪哉はキッと鋭い視線で橘を睨みつけるが、その眼差しは熱っぽく潤んでいるため迫力がない。むしろ逆効果だと言ってもいいだろう。 「あんま煽んなよ。抑えが利かなくなりそうだ……」  橘は熱い吐息交じりに呟くと、首筋に顔を埋め舌を這わせた。 「は、ぁ……っ待って、せんぱ……っ」 「待たねぇ」 「や……っだめ……ですってば……っ」  必死に抵抗する雪哉の言葉を無視して、橘は シャツの中に手を滑り込ませてくる。指先が突起に触れるとキュッと摘まれた。それだけで体に電流が流れたかのような感覚に襲われる。  首筋を舐め上げ、時折強く吸い付いてくる唇に身体がどうしようもなく震えてしまい、力が入らない。 「や……っ」 「なんだよ、嫌なのか? じゃあなんでココはビンビンになってるんだろうな」 下着の上から形をなぞる様に指先で弄ばれて、ゾクゾクとした疼きが下半身に広がる。 「あ、ぅ……っ」 「なあ、本当は期待してるんじゃないのか? ここ、直接触ってほしいって」 「ちが……っやめてくださ……っ」  雪哉は泣きそうな顔で首を横に振る。だが、その仕草がかえって橘の加虐心を煽り立てていることに本人は気づいていない。  こんな場所で、こんなことをしているのがもし見つかったりしたら大変なことになるのは目に見えている。  だが、そのスリルが逆に興奮を煽りどうしようもない背徳感が正常な判断を鈍らせていく。

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