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秘密④
雪哉が顔を逸らすと、橘はその耳元に唇を寄せた。
「まさか、これで終わりとか思ってねぇよな?」
言うが早いか腰を高く持ち上げられ獣のような体勢を取らされた。尻を上に突き出した格好が恥ずかしくて思わず抵抗しようとしたが、腰をがっしりと掴まれて動けなくなる。
「ちょっ、なにす……っ」
抗議の声を上げようとした時、橘の吐息が耳にかかってぞくりとした。
「こっちも解してやるよ」
「――っ」
橘は徐に自分のポケットからさっき拾った一澄の乳液を手に取ると、雪哉の放った精液と共に後孔に塗り付けた。
「っ……」
初めての時は最初の挿入の時に時間がかかったが、乳液のお陰なのか、身体が慣れたのかわからないが最初の時ほどの痛みは感じなかった。
それどころか、直ぐに順応してあっという間に二本の指を飲み込んだ。
「は……ん、ぁ……っ」
雪哉の呼吸に合わせて、橘の指が抜き差しを繰り返す。何度も繰り返されるうちに、その圧迫感にも少しずつ快楽を感じるようになってきた。
「ん……んぅ……っ」
「ははっ、もうグズグズになってんじゃねーか」
「んっ、そ、なこと……っ」
三本目の指が入ってくると、バラバラに動かされて、その度に内壁がヒクつくのが自分でもよくわかった。
「あ、ん……っ」
前立腺に触れられた瞬間、ビリっとした電流のようなものが全身を駆け抜けて、思わず甲高い声が上がる。
「ここか……」
橘は確かめるようにそこばかりを狙ってくる。その度に強烈な快感に襲われ、そのたびにびくんと体が跳ねる。
「やっ、そこばっか……っ」
「はっ、その割には良さそうだけど?」
「んっ、ふ……ぁっ」
雪哉の反応を楽しむように、橘は執拗にその場所を刺激してくる。そのたびに目の前がチカチカとして、頭の中が真っ白になった。
「も、無理……です……っあっ、ふ……ッ、先輩、も……いいから……っ早く、先輩の……欲し……っ」
我慢できなくて腰を無意識のうちに揺らしながら強請るように言えば、橘はチッと舌打ちをして、指を引き抜いた。そして雪哉の腰を掴むと、ぐっと引き寄せた。
「煽るんじゃねぇよ……優しくしてぇのに……ッ」
橘が苦々しく呟いて、熱い塊が後孔に触れた。
「あ……――ッ!」
腰を掴んでずぶ、と質量のあるそれが押し入ってくる。
「ぁ……っ」
指とは比べものにならない程の圧迫感に息が詰まり、苦しさに思わずぎゅっと目を瞑る。
「……ッ、息しろよ」
「は……はぁ……っ、む、無理……っ」
苦しいのに、気持ち良い。熱くて固いもので腸壁をゴリゴリと擦られるのが堪らなく気持ち良くて、そのせいで更にキツく締め付けてしまい余計に苦しくなる。
「う……ん、ん……っ」
それでも橘は乳液を結合部に垂らしローション代わりにしながらゆっくりと押し進めてきて、その度に背中が反り返ってしまう。
「……っくそ、お前の中……スゲェ……っ」
全部が収まったところで橘は荒い息を吐きながら雪哉の腰を両手で鷲掴みにして、いきなり最奥を突き上げた。
「んぁっ! あ、ああ……っ」
一番深いところを突かれて、視界が明滅する。
「はぁ……っ、あ……っ」
橘は一度大きく息を吐くと、腰を引いてまた強く突き上げる。それを繰り返されて、その度に大きな波に飲み込まれそうになる。
「んっ、あ……あっ」
激しい抽挿に思考が蕩けそうになる。
「せんぱ……っ待って、激し……っ」
「悪い……俺も余裕ねぇわ……っ」
背後で橘がそう言ったかと思うと、再びあの場所を擦られて思わず悲鳴じみた声が出た。
「あ、ああっ、やっ、だめ、そこダメ……っ」
「……ッここが良いくせにっ」
橘は執拗にその部分を責め立てながら腰を打ちつけてくる。
「んっ、あ、やっ、あ……っあ……あァっ!」
その度に身体の奥が痺れるような感覚に陥り、口からはひっきりなしに甘ったるい声が漏れる。
蒸し暑い室内にぐちゅぐちゅと凄い音が響き渡る。そんな音を自分たちが出していると思うと恥ずかしくて仕方がない。
その音が余計に興奮を煽って、どんどん絶頂へと上り詰めていく。
「あ、だめ、イっちゃ……っ、ぁ、あっ、イク……っ」
「いいぜ、イケよ……っ」
「んっ、く……ふぁ……―――っ!」
ビクンと身体が仰け反り、性器から勢いよく白濁が飛び出した。射精の感覚に内壁が収縮すると、橘がギリっと歯を食い縛るのがわかった。
「く……っ」
「あっ……!?」
どくっと橘の性器が脈打ったかと思った直後、熱い飛沫が体内に広がるのを感じた。
「はぁ……」
衝動が収まると脱力して、橘は雪哉に全体重を預けて来た。雪哉の中にはまだ橘がいて、熱く脈打っている。
――また、ヤってしまった……。
身体の中に他人を受け入れて、そこから快感を拾えるようになるなんて、以前の自分からしたら信じられなかった。しかもまた中に出されてしまった。
あの合宿の時の一度だけなら、あれは事故だったと言う一言で済ませられるが、流石に二度目ともなるともう言い訳はできない。
しかも、困ったことに、嫌ではないのだ。むしろ気持ちよすぎてクセになりそうで怖い。
もしもまた、橘が誘って来たら雪哉はきっと拒否できないだろう。
自分は淡白な方だと思っていたのに、こんなにも快楽に溺れてしまうなんて思わなかった。
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