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忍び寄る悪意⑪

「お前ってほんっと頑固だよな……今回は引いてやるけど、相談する気になったら遠慮なく言えよ。迷惑とかじゃねぇから」 「はい……ありがとうございます」 「あと、一人で抱え込むな。何かあったら絶対俺を頼れ。いいな? 先輩命令だ!」 「……っなんですか……それ……」 突然、先輩風を吹かされ苦笑いを浮かべる。 言葉は乱暴なクセに、優しく頭をポンポンと撫でたりするから……ズルいなぁと思ってしまう。 「じゃ、俺行くから……後でちゃんと来るんだぞ」 「わかってます」 「おぅ。じゃーな」 最後にもう一度、ぽんと頭を叩いて橘は去っていった。その後姿をぼんやりと見つめ雪哉は大きく息を吐いてロッカーに凭れた。 その瞬間、尻のあたりに違和感を感じ咄嵯に手で探ると、尻ポケットに何故か真っ黒いボール ペンらしきものが突っ込まれていた。 なんだこれ? 勿論雪哉に心当たりはない。 誰かが故意に入れたのだろうか? 一体何のために? まさかとは思うが、この悪戯も大久保がやったのだろうか? でも、こんなの嫌がらせにもならないし……もしそうだとしたら、何故わざわざそんな事をする必要があるのだろう。 考えれば考えるほどわからなくなって幾度目かもわからない溜息が洩れた。 「はぁ……」 取敢えず、考えるのは一旦置いておいてみんなと合流しよう。どのみち、雪哉の持ち物は誰かが隠してしまってないのだから帰ることも出来やしない。 だったら、みんなと合流した方が自然というものだろう。 それに、もしかしたら犯人に繋がる何かが見つかるかもしれない。 そう思いなおし、雪哉は部室を出て体育館へと向かった。

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