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犯人は誰だ!? 橘SIDE ③

バンッと鼓膜をつんざくような音が響いて、部室の中にいた奴らがぎょっとしてこっちを見る。 「――よぉ、何やってんだよ。随分楽しそうな事してんじゃん? 俺も混ぜろよ」  自分でもびっくりするくらい地を這うような低い声が出た。 「っ、橘……っ!」  室内に居たのは3人。案の定自分のよく知っている顔だった。この3年間、苦楽を共にしてきたバスケ部の戦友……。  しかも! そのうちの一人はあの、根暗野郎――飛田だった。  コイツ、レギュラーのくせして、マジ何やってんの? いや、もはやレギュラーがどうとか、関係ない。 「た、橘! お前、どこから聞いて……っ!?」 「あ? 今それ重要か? んな事より、卑怯な真似してんじゃねぇよ」  後ろ手に鍵を閉め、逃げられないようにしてからじりじりと距離を詰めていく。  橘にバレた事で真っ青な顔をしている奴もいれば、悪事が見つかって悔しそうな顔をしている奴もいる。反応は様々だが、飛田だけは相変わらず表情の読めない顔でジッと橘の方を睨み付けていた。 「――ハッ、なんだよ橘。戻って来て、ヒーロー気取り? お前のお気に入りだもんな、萩原は」 「あ?」  冷静に対応してやろうと思っているのに、いきなり出てきた雪哉の名前に、一瞬で目の前が赤く染まる。飛田の小馬鹿にした態度と、挑発的な笑みが気持ち悪くて仕方がない。  ――間違いなく、コイツが主犯格だ。  ウインターカップ前に、暴力沙汰はご法度だ。わかっている。……わかっているけれど……。 「……テメェ、いい加減にしろよ? ぶっ殺すぞ……」  握り締めた拳をぷるぷると震わせながら凄むと向こうはビビッたのか、一瞬怯んだ様子だったが、一定の距離を保ちながら睨むのを止めない。 「はっ、やってみたら? どうせ出来ないクセに……」 「……っ、くそ……っ」  唇を強く噛んで、堪える。そうでもしないと本当に殴りかかってしまいそうだった。 「お前ら、萩原虐めて楽しいわけ? なんでアイツなんだよ」 「……それは……」  口の中に広がる鉄臭い味を飲み込み、極力穏やかな声で問うと、飛田の後ろでビビっているうちの一人が言い淀んだ。  大方、雪哉の才能に嫉妬してとか、そんなところだろうと、予想していたが、飛田の口から発せられたのは全く違う言葉だった。 「――みなみちゃんが……、傷ついてたから……」 「は? みなみ……?」  思わぬ名前に眉を寄せて聞き返すと、飛田が不愉快そうに舌打ちをした。

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