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犯人は誰だ!? 雪哉SIDE ⑥
「あのバカと何を話したんだ? お前、何も考えずに喧嘩を売るような奴じゃないだろ。何煽ってんだよ」
「煽ったつもりは無いんですが……。まぁ、簡単に言えば自分がフラれた腹いせですよ。レギュラー降りろとか言われたけど、そんなのどうせ取って付けただけの理由だろうし……」
言いながらも先ほどの光景を思い出し、全身をぶるっと震わせた。もしあの場に橘が来てくれなかったらと思うと、ぞっとする。
その様子を見た橘がチッと舌打ちを一つして、苛立たし気に拳を握り締める。
「くそ、やっぱ一発ぶん殴っときゃよかった!」
「ダメです暴力は。大会に出られなくなったらどうするんですか」
「わかってる。けど……お前はそれでいいのかよ」
どうにも釈然としないと言った面持ちで口を尖らせ、眉間に深い皺を刻みながらそう問われ雪哉はしばし考えを巡らせてから正直な気持ちを口にした。
「そりゃ、怖かったし、本当はちょん切ってやりたいほどムカついてます。だけど……先輩が助けに来てくれたから……」
思えば、橘には情けない姿ばかり見せている気がする。落ち込んで人知れず泣いていたあの夏祭りの日も、ついうっかり流されて関係を持ってしまった日々も橘以外誰も知らない。
だからこそ、最初に来てくれたのが橘でよかった。もし、他の人だったら――考えるだけでも恐ろしい。
「あんな姿、橘先輩にしか見せられないから……それに、先輩が凄くカッコよくて、情けないアイツの姿も見れたのでなんか、どうでも良くなっちゃいました」
絶望から救ってくれた橘の姿を見た時。あの瞬間――。安堵して全身の力が抜けた。来てくれたことが嬉しくて、ただそれだけで泣きそうだった。
「――かやろ……お前、マジ……」
橘は何かを言いかけて、途中で口を噤んでしまった。続きが気になって身を乗り出し掛けるとそれに気付いた橘がふいっと視線を逸らし席を立つ。
「とにかく、今日はもう帰るぞ。送ってくから支度しろ」
「えっ、でも……練習もあるし、明日の準備とか……」
言いかけてハッとした。和樹が色々と調べてくれていたと言うのなら自分に悪戯を仕掛けていた犯人も無事に捕まったと言うことだろうか?
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