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いざ、文化祭
文化祭当日、体育館の中は超満員とまではいかないものの、思った以上に客入りが良く、生徒達は皆忙しなく動き回っていた。
放送部の作ったプログラムに従って、雪哉達男子バスケ部以外にも、漫才を披露するものがいたり、ダンスパフォーマンスをするものがいたりと結構な盛り上がりを見せている。
「……ねぇ、これやっぱり変じゃないか?」
鏡に映った自分を見て、雪哉はとてつもない不安感に襲われた。
肩まである黒いサラサラヘアのウィッグに赤いリボンがよく映えている。一見すると可愛らしい雰囲気を醸し出してはいるものの、骨格は所詮男だ。
女性らしいしなやかさや、柔らかさはどう頑張っても出せないし、何より180㎝近い高身長がシュールさを際立たせているようにも思える。
「なに言ってんだよ。超似合ってるってば。自信持てよ。手伝ってくれた女子も可愛いって言ってくれたじゃん」
小人の衣装に身を包んだ和樹に力説されて、雪哉は「うぅ……」と言葉を詰まらせた。
顔中にファンデーションやらいろいろな物を塗りたくられて気持ちが悪いし、首の辺りはゴワゴワする。その上、このヒラヒラしたワンピースが物凄く落ち着かない。
ここまで来たら腹をくくらなければいけないことはわかっているけれど、どうしても踏ん切りがつかない。
「大丈夫だ萩原! 可愛いって言うよりクールビューティって感じがして凄くいいぞ。堂々としよう!」
「クールビューティってなんですか……」
悪い魔女役の大久保に励まされ、まぁ、彼よりはまだマシかと思いなおす。
2メートル級の魔女役の大久保を見ていると、似合わな過ぎて逆に面白い。衣装係の生徒達が「絶対似合うから」と、熱心に勧めてきたので仕方なしに了承したが、やはり女装というのは違和感しかない。大久保は顔中メイクで黒くなっており、口元はいつも通りマスクで覆われていて殆ど見えない状態だ。
そもそも、演じるのは全員男だし、いつも温厚な大久保が裏声使って「世界で一番美しいのはだぁれ?」とか言っちゃってる時点でなんかもう、笑えて来る。
さらに言えば、小人役だった飛田が、今日に限って来ていないので急遽代理で出演の決まった増田なんて、飛田の衣装を無理やり着ているせいで、衣装がパッツンパッツンになっている。
……なんか、大丈夫な気がしてきた。
「もうすぐ本番だな。頑張れよ」
ポンと背を押され振り返る。
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