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 表情を崩さずゆっくりと詰め寄られている。それをどうにかするために少しずつ後ずさる。しかし、それでも距離は変わらず、むしろ近付いている。  そして、とうとう壁際まで追い詰められてしまった。拒絶しようと手を伸ばすが、手首を壁に固定されてしまい、完全に抗うことができなくなってしまった。もうこれ以上逃げ場がないと思い、嫌な感覚が訪れるのであろうと思わず目を閉じた。  いつまで経っても予想していた感覚がなく、何もない状態が続いた。ゆっくりと目を開けると、唇に何かを感じた。  クノスは、僕の唇へ唇を重ねている。突然のことに驚き、僕の身体は動かなくなり、頭の中は真っ白になる。  こんなことは今までしたことない。むしろ、男同士でするものではない。それでも、初めての感覚に、なぜか気持ち良さを感じている自分がいた。  しばらくその感覚に浸っていると、クノスの方から離れていった。急に我に返り、再びクノスを見る。

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