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第3話

「うわ、きれい」 屋上に出て街を見下ろす ちらちら見える小さい人々とたまに屋上に降り立つ小さい雀 普段は鍵がかかっている屋上の鍵は錆び付いてて簡単に外せた ここはとっても気分がいい 初日から穴場を見つけて、なんだか得した気分になった 「…きもちい」 優しい風が前髪を掠めて通っていく あまりの気持ちよさに眠気がやってくる とくに眠気に争う事もなくそのまま身を任せて寝転がる だんだん意識が遠くなるのを感じながら美風は眠りについた チャイムの音で目が覚めた 美風はまだ重たい瞼を擦り一つ大きな伸びをした 気持ちいい眠りだった 久しぶりにゆっくり眠れた気がする 「あれ、兄さんだ…」 ふと、フェンスの隙間から下の景色を見ると笑顔で笑う兄と、その隣には悠雅君がいた そうか 今日体育倉庫に呼び出したのは僕と兄さんが会わないようにするためだったのか 兄さんはいつも僕を気にかけてくれる だからどんなに離れたクラスでも帰りには必ず、僕のクラスまで迎えに来て一緒に帰ろうと誘うのだ 正直僕はそれが嫌だった 兄さんの友達が面倒だし 何より、比べられた目で見られるのが嫌だった だから、今の光景を見てもなんとも思わないが、兄とふたりきりで帰りたかったのであれば悠雅君もそう言えばいいのに 悠雅君は結構、陰湿なやり方で僕を避けるんだな 「悠雅君て、やっぱり変な人」 いじめの主犯者をこんなふうに客観視する美風も十分どうかしているのだが、いじめる勇気があるのなら、なぜ直接言わないのか不思議に思う 美風は知ってる。 悠雅は恭冴兄さんが好きなのだ それも性的な意味で 早く告って付き合っちゃえばいいのに そうすれば僕に対する嫉妬からできたいじめも少しは減るだろうか ごちゃごちゃ考えているとまた眠くなってきてしまった 体育倉庫に行く理由も無くなったのだから、もう一眠りしていこうかな そう思い美風はまた、静かに瞼を閉じた

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