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第4話 迷い

はっとして目を開くと辺りは一面真っ暗だった しまった。完全に寝過ごしてしまったようだ 急いで帰り支度をする 本当は学校に持ち込み禁止のスマホを覗くとすでに時間は午後8時を回っていた 父さんと母さん、怒るだろうな いやだな。帰りたくない 「……帰るの、やめようかな」 ふとそんな事を考えて、動かしていた手をピタリと止める この時なぜ、そんな事を考えたのかはわからない そっとフェンスに手をかけ考える この学校は5階建 落ちたら死ねるだろうか ぐっと手に力を入れ、重たい体を持ち上げフェンスを乗り越える 顔を出し下を覗くと、強い風が這い上がってきて前髪を浮かす 膝や手が震えて止まない 怖い だが、それよりも 解放されるという期待の方が大きかった 一歩、また一歩と。 ついに端まで来てしまった あと、もう一歩 知らないうちに涙が溢れていた。下を覗くたびに流れ落ちる涙は月光で輝いて、きらきらと光っていた この涙と、一緒に そして決心がつき、飛び降りようとした ……prrrrrr…… そのとき静かな屋上には似つかない大きな音が流れ、踏み出そうとした一歩をぎりぎりで踏ん張った 「…はっはっはっ」 今まで止めていた息が吹き返したように荒くなる 今自分は、何をしようとしてたのだ? 正直自分でもわからない。 まるで夢の中にいるような感覚で、何も怖くなくなったような気がしていた もう少しで、死ぬところだった 何もなくてよかったが、本当に手遅れになるところだった フェンスの内側に戻って、カバンの中のスマホを取り出す 見ると兄さんからの電話だった きっと心配してかけてくれたのだろう 急いでカバンを持って屋上を後にする 巡回している教員達に見つからぬよう、裏口の窓から学校を抜け出した 必死で走って家についた時には両親はカンカンに煮えたっていた 「どこに行ってたんだっ!このクソガキめっ」 怒鳴る父に蹴飛ばされ強く体を打ってしまったが、今はそんなこと気にしている余地はない 必死に頭を擦り付けて謝る 母も謝る僕に対して罵声を浴びせ、殴る蹴るの嵐だった 兄は物陰から心配そうに美風を見ているだけで、怖くて動けないという様子だった しばらくたって満足したのか、父は僕を引きずって屋根裏に放り入れ、鍵を閉めて行ってしまった ああ、閉じ込められちゃった 明日は学校に行ける気がしない いや、ポジティブにいこう 行きたくもない学校をサボれるのだ 美風にとっては万々歳だろう 真っ暗で埃っぽい屋根裏はあまり好きじゃないが、仕方ない 1日だけ、我慢するか そう美風は腹を括って、先程打った箇所の痛みに耐えながら一晩を過ごした

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