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第5話 風邪気味
「けほっ…はあ……」
今日はあいにくの雨
電気もつかない屋根裏はさらに暗く、じめじめしている
1日埃をかぶって寝て、寒さに震えていたせいか、咳がでて熱っぽい
風邪でもひいたのだろう
父は朝早くから僕を引き摺りだして家のことをやらせる
ふらふらと目が回り、足もおぼつかないが、頑張って耐えて、両親が仕事で家を出てやっと座ることができた
疲れた
昨日のことが頭に浮かぶ
やっぱ死んどけばよかったな
今更後悔しながら体を横に倒す
もう起き上がることすらままならない
ゆかがひんやりしてて気持ちいい
自分でさえわかるほど熱くなったおでこを、窓から入ってくる風が撫でる
ぷっつりと意識が切れた感覚がしたが、争うこともできぬまま意識を手放した
「…み…さ……」
兄さんの声。僕を、呼んでる
「み……さ。みかさっ」
ばっと起き上がる。
いつの間にか寝てしまっていたようだ
辺りを見渡すが、まだ父と母は帰ってきてないようだ
ホッと胸を撫で下ろす
が、目の前の兄を忘れてしまっていた
「大丈夫?顔が凄く赤いよ…薬買ってきたから飲んで、ね?」
言い聞かせるように兄は今買ってきたのであろうビニール袋に入った薬をだす
面倒見がいいし、冷静に判断できる兄は本当にすごい。
同い年なのに、貧弱で弱虫な僕とは大違いだ
僕は兄を誇りに思う
「大丈夫、俺がいるからね。まずはどれくらい熱が出てるのか見ないと…」
「…触らないでっ」
だからこそ僕には関わって欲しくない
おでこを触ろうとした兄の手を払い落とす
僕に関わっている事がバレたら兄さんだって何されるかわからない
今まで可愛い可愛いと兄を愛でていても結局あの人達は自分が一番なのだから、気に入らない事があれば兄さんだって危ないのだから
だが、それよりも兄を頼ってしまうと自分が酷く惨めに感じるから美風自身も嫌なのだ
「…っでも、このままじゃ」
「やめて、ほっといて…」
「…わかった、ごめんね」
「待って」
そう言い放てば兄はしぶしぶというように離れていくが、ふと思いだして美風が兄を止めるとばっと振り返って反応する
「どうしたの?何か必要?」
「いや、今日は夜ご飯何がいいかなって」
それを聞いて兄の顔はみるみるうちに青ざめていく
僕より兄さんの方が病人みたい
「まさかその状態で料理する気なの?」
「別に病人の料理が嫌ならなんか買ってくるよ」
「そうじゃなくてっ!今日は休みなよ…支度は僕がやるからさ」
本当に兄さんは大袈裟だなぁ
さっきまでぐっすり寝たから料理くらいできるし、買ってくるくらいの元気はある
別にそんな苦しいわけでもない
早くしないと父と母が帰ってきてしまう
正直そっちの方が焦る
引こうとしない兄を無視して買い物に行くため支度をする
それでも止めようとするから僕は兄を振り切り外に出てスーパーへと走った
いつもとは違う道にそれると案の定兄は僕を見失ったようで、それ以上は追いかけて来なかった
全く、兄さんのお節介が一番厄介なのだ
今日はさっさと買い物してご飯作って早く寝よ
「今日はカレーでいいかなぁ」
1人で晩御飯の献立を考えながら商品が並ぶ棚の野菜や肉を見て回る
一通り材料が買え揃えられてから家に帰った
家に入ると父と母は帰ってきていて晩御飯を急かされた
言われるがままキッチンで作業しているが、心配して覗いてくる兄に気が散って仕方がない
なぜ僕に関わるのか
僕はどうすればいいかわからない
どうすれば兄を守れるのか
いや、僕にはどうにもできない
どうしようもないのだ
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