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第10話

「じゃ兄さんサラダ運んで。あと箸も」 「わかった」 最後の仕上げにご飯の上にふわふわの卵を乗せる 張り切って作ったおかげでとても上手くできたと思う あとは上手い具合に切れ目を入れられれば完璧… 「…よし、できたよ」 ふわふわと揺れる卵の真ん中に切れ目を入れればとろとろと中身が垂れ流れ、ライスは一瞬で黄色に包まれる 甘い香りを漂わせながらテーブルへ運ぶ 「じゃん。オムライス」 「美風はやっぱり料理が上手だね」 「これは自信作、上手く出来た気がする」 そう言って2人の前にオムライスを並べる 兄はとても褒めてくれたりするが、一方で悠雅は不服そうな顔をしていた 「なんか、嫌いなものあった?」 「…俺オムライス嫌い」 「え、あ、そうなの?ごめんごめん」 オムライスが嫌いだなんて知らなかった ちゃんと聞かなかった僕が悪いし、残念だが、今からでも別のものを作ろうと思い、悠雅の前にある皿を下げようとしたが…   バンっ 「あのさ!食べたくないんなら帰れば?」 「お、おい恭冴…どうしたんだよ…」 「別に。文句言うなら帰れって、言ってんの」 「…にいさん?」 皿を下げようとした瞬間、兄がいきなり立ち上がって机に拳を叩きつけた いきなりの行動に美風も、もちろん悠雅も理解できずに固まったままだ 兄が怒っているところなんて滅多に見ないものだから、それほどの衝撃が2人を襲った 「もういいよ。早く帰って」 冷たく言われてしまってはなすすべもなく、しゅんとした顔持ちで悠雅はとぼとぼと帰って行く その様子をぼーっと見ていた美風も、ハッとしてすぐに悠雅の後を追った 「ごめんね、ほんと。きっと兄さん疲れてるんだよ」 「…お前のせいだ……」 「…ごめん」 そう一言残して悠雅は家を出て行った なんだか申し訳ない それにしても兄はどうしてあんなに怒っていたのだろうか 今思い出しても、怒った兄は相当怖くて、持っていた皿を落としそうになるほど 玄関に立ちすくんだまま、その場を動けなかった

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