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第12話

朝、目が覚めたのは午前4時前くらい 最近やたらと目が覚める時間が早い 不眠症とまではいかないが、ぐっすり眠れないのはやはり不安だ とは言え早く起きれるのはありがたい 目はさっぱりしているし、早い朝は気分がいい 起き上がって身支度をする 結局、僕が眠っていたのは兄の部屋だった 父と母に見られたらどうなることか なおさら今日早起き出来たことに安堵した 時計を見てもまだ4時半 お弁当を作っても学校まで時間はたっぷりある 特にすることもないしまた散歩にでも行こうか 靴を履いて玄関をでる 今度こそは兄は起きてこなかった 怒鳴り慣れてない兄だ きっと昨日の事で疲れてしまったのだろう そんな事考えればわかるのに、さっさと寝てしまった自分が情けない もう中1なのだ そろそろ兄に頼るのはやめなければ 薄明るい道を歩く 静かな空気には鳥のさえずりが響き、まだ冷たい風が美風の頭をひんやりと撫でていく 「…あれ、どうしたんだろ」 しばらく歩いていつもの公園につくが、ベンチには人がいて座れなかった がっかりしたが、美風はすぐに異変に気づいく よく近づいて見てみるとまだ小さい少年だった 顔は真っ青で手足がぶるぶると震えている 「ね、君。だいじょうぶ?」 ベンチの前にしゃがみ込み、少年の肩を軽く叩くと閉じていた瞼を開けてこちらを見るが、声を出さないままだ 何かを伝えたいのか、口をぱくぱくと動かしているが、聞こえてくるのは掠れた空気だけだった 「大丈夫。何か飲み物を…」 ベンチから立ち上がって近くの自販機から水を買い、少年の元へ戻る 蓋を開けて渡そうとするが、手に力も入らずで、自力では飲めないようだった 仕方ないので、美風が飲み口を口に近づけてやる そうすれば、小さく喉が動いた よかった、飲んでくれた 「まってね。今救急車呼ぶから」 「…あっ」 「!?」 スマホを取り出して救急車を呼ぼうとしたが、少年がいきなり声を上げてしがみついてきた そして、少年は首を必死に横に振る 美風は驚いたが、瞬時に救急車は呼ばれたくないのだろうと察した 「どうして?怖くないよ、大丈夫だよ?」 そう言っても少年は首を振るばかりだった どうしたものか、救急車を呼べないなら美風はどうすればよいのか しばらく狼狽えていると、今度は少年が口を開いた 先程のように掠れた声で 「…こわ、いの。いかないで…」 「行かないよ、どこにも。何か欲しいものはある?」 「…さむい」 「わかった。これ着ていいよ、あったかい?」 小さな鈴の音のような透き通る声は、掠れていても美しく聞こえた が、今はそんな事を気にしていられない 震えた体に自分の上着を羽織らせる そしてぎゅっと抱きしめて、自分の体温を与え分ければ、多少の震えは治った気がした   ガチャッ 「みなと?みなとっ!」 しばらくそうしていると公園の脇に車が止まり、その車から母親らしき女性がこちらに走ってきた 「お母様ですか?」 「ああ、みなと!大丈夫なの?」 「…かあさっ」 女性は酷く興奮していて、美風の言葉は届いていないようだったが、"みなと"と呼ばれた少年は、ふらつく足で女性の元に行こうとするものだから、慌てて抱き抱えて女性の元まで運んで行った 女性も慌てて走ったせいで、地面に足をつっかえていた 一晩中探していたのだろうか 髪は乱れ、顔はやつれていた 「大丈夫ですか?」 「みなと!無事なの?怪我は?」 「…かあさん」 「何!?どうしたの?」 「……おなか、すいた」 「「………」」 そのあと落ち着いた女性はみなとと言う少年を大事そうに抱えながら、お礼をしたい、と何度も何度も美風に頭を下げた だが、そろそろ美風も時間がない 女性に軽く会釈し、連絡先を教えてくれ、と言う女性を無視して駆け足で公園を離れた 離れる際、少年に手を振ると小さくだが、手を振りかえしてくれた 「早く病院に連れて行ってあげてくださーい!」 「本当に、ありがとうございますっ」 結局、女性はずっと頭を下げていて、気まずさがあったが、人に感謝されて気を悪くしない人はいないだろう 鼻歌混じりで家に向かい、扉を開ける前にやっと気づいた 「あ、上着…」 返してもらっていなかった あのポケットには入れっぱなしだった生徒手帳も入っているが、、、 「ま、いっか」 人助けのためならば、致し方なし…

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