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第15話

「だいたいおかしいと思ったよ。いきなり美風の連絡先教えてくれって言ってきて…」 「兄さんも何で教えたりしたの。大変だったんだよ?」 「ごめんね、急に美風の誕生日プレゼントを本人に聞きたいって言うからさ」 「え?」 「…ん?」 「あ、いや、何でもない」 後に兄から聞くと、悠雅が美風の誕生日プレゼントを用意したくて連絡先を聞いてきたと言っていたが、実際悠雅が美風にしたのは兄の誕生日プレゼントの話だ なんて卑怯なやつなのだ そんなのだから兄さんに愛想つかれるのだ 「でも、いいの?今朝仲直りしたばっかなのに」 「いいよ、あんな奴。美風を侮辱するやつなんて」 「…ふーん」 可哀想だけど、これはもう美風にはどうしようもない これから忙しなくなりそうだ 「お前のせいだ」 「…言うと思った」 同じクラスであるために放課後にまんまと悠雅に捕まり、例の空き教室で話す あれから兄は悠雅の事をまるで空気のように扱い、根っから関係を絶とうとしている 悠雅が話しかけようが、冷たい目で睨みつけては無視をして横を素通りし、美風の元へ向かう その繰り返しだ なんとも悲惨な話だが、こればっかりは悠雅が悪いと美風と思う 自分が掘った墓穴だろう 自業自得のくせに未だに美風のせいにしてくる性格も、そろそろ自覚してほしい 「お前のせいなんだから、お前がなんとかしろよ」 「…よくそんな無茶言えるよ。だいたい悠雅君がぐずぐずしてるから兄さん逃げちゃうんだよ。あんだけ僕が機会を作ってあげたのに…」 「お前にはわかんないよな。そんな簡単な事じゃねぇーよ」 「確かに兄さんゲイじゃないけど、だからってずっと 僕は童貞です 見たいな顔してるのもどうかと思うけど」 「童貞って…っそう言うお前は違うのかよ!」 しばらくくだらない言い争いをしていた 放課後の誰もいない廊下には2人の怒鳴り声が大きく響く事も気にせずに、口論は続いた 「もういい!悠雅君に肩貸した僕が馬鹿だったよ!」 「黙れ、誰も助けなんて頼んでねぇよ!」 悠雅が美風を殴り始めるまでそう長くはなかった いつもよりも力強く殴られ、美風の頬は赤く腫れていった 「お前なんか、お前なんか!」 何度も何度も拳を振り上げる悠雅と、ただただ無心で殴られ続ける美風と それは悠雅の息が切れ、疲れ果てるまで続いた 気づけば美風の唇が何重にも切れ、鼻血も出てしまい、顔は血だらけだった 歯が折れていないだけまだマシだ そう思いながら美風は自分の鼻血をグッと袖で拭いて、痛みに耐えながらも口を動かした 「いてて…気はすんだ?」 「………っ」 「もー、自分でやったんでしょ。まさかやり過ぎたなんて思ってないよね?」 あまりの悲惨な顔を見て固まる悠雅に美風はほとほと呆れていた グイグイと袖で血を拭き続ける美風を悠雅は唖然と見ては、申し訳なさそうに目を逸らすものだから、見ているこっちもイライラしてくる 「恭冴に…嫌われた…」 「はいはい、知ってるよ」 「恭冴がいないと、俺…」 「たった一回振られたくらいでなよなよしないでよ腹立つなぁ」 こんなんじゃ兄さんどころか、そこら辺の女の子にも引かれるくらいめそめそと項垂れる悠雅を冷たい目で見ていたが、美風にはどうしても可哀想に見えてしまうのだ イケメンだからだろうか 「そんなに凹むことかなぁ」 「………」 「ねぇ、じゃあさ」 何を言っても反応を見せず、完全に消沈している悠雅に美風は微笑んで見せた 顔を伏せる悠雅の視界に美風がわざと写るように下から覗き込み、今にも泣いてしまいそうな顔をしている悠雅に囁いた 「僕がさ…」 「兄さんの代わりにセックスしてあげようか?」

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