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第25話

………ちゅんちゅんちゅん……… 「………」 遠くから鳥の囀りが聞こえて窓の方を向く カーテンの隙間から光が入り込んで、部屋を明るく照らしていた 結局、昨日の夜は悠雅に押し倒された辺りから、記憶が朧げだ どうやら美風は途中で気絶をしたようで、そこからは昼までぐっすり、だったようだ そういえば、昨日はリビングのソファの上で盛っていたが、今美風が寝転んでいるのは見知らぬ部屋のベッドの上だった 思えばあれだけ汗をかいたというのに体のベタつきもない だとすると美風は気絶した後、だいぶお世話になったらしい ところでここは悠雅の寝室だろうか。 リビングと同様、シンプルで殺風景で、美風が寝ているこの無駄にデカいベッド以外は特に何もない それにしても気絶するほどって…マジ… あまり考えたくないが、どれだけ悲惨な目にあったのかは美風の腰痛でわかりきっていた 痛すぎてしばらくは起き上がることが出来ずに、ただただボーッと天井を見ていたら、ドアが開く音がして、そちらに目を向けると悠雅がそこに立っていた 「あ、起きたか…昼ご飯ができたから、ちょうど起こそうとしたんだ。 …起き上がれる?」 「ちょっと、無理かも。引っ張って」 「わかった。手、貸して」 「はい」 美風は悠雅に向けて手を伸ばして、悠雅はその手を引っ張る が、思ったより腰に負担がかかったようで、立ち上がるのも一苦労だ 「あぁいたたたた…」 「ご、ごめん、大丈夫?」 「じゃ、ないかも〜。こんなになるまでがっつくなんて、悠雅君やらしぃ〜」 「……昨日は、本当に、ごめん」 「冗談だよ、早く食べよー」 本当に冗談のつもりで言ってみたが、悠雅は顔を赤らめながら謝ってくるものだから、美風はついつい笑ってしまいそうになる もっとも、悠雅本人は結構気にしているらしい 食事をしてる際にも家まで送る、と、言ってきた 「大丈夫だって。お迎えは別の人に頼んでるから」 「別の人?」 「そー別の人。仲良しのお友達がいるんだ〜」 「そっか、友達…か」 「んっ!ご馳走様!じゃ僕行くね〜」 昨日は食べ損ねたからお腹が空いてたのもあるけど、悠雅の料理は以外においしくて、寝起きでもぺろりと食べられた ぱたぱたと急ぎめに準備をする美風を見て釣られて悠雅も席を立った 「もう行くのか?」 「うん。美味しかった!じゃまたね〜」 「あ、待って…」 「ん、何?」 悠雅は食事を一時中断して、今すぐにでも出て行こうとする美風を呼び止めると慌てたように財布から10万を札で取り、渡してきた 「昨日の、分。付き合ってくれてありがとう」 「あちゃ、すっかり忘れてた。ありがと。でもいいよ、お昼食べたし。それで十分だよ」 「いや、でも…」 「初回無料!兄さんに内緒にしてくれればいいから」 「だけど、やっぱりさ…」 「あっ!友達着いたみたい。じゃバイバイっ」 「あ…待って、せめて下まで送るから…ちょっと待って!」 そそくさと出て行く美風の後を悠雅は急いで追いかける エレベーターの中にいる時もずっとお金を渡そうとしていたが、結局美風のいらないの一点張りに負けて、渋々財布をしまった 下について、美風はここまででいいと言ってエントランスで悠雅と別れて"友達" の車を探した 「えーっと、あった」 少し離れたところに車が止まっているのを見つけて、小走りで駆け寄る ガチャ 車にたどり着く前にドアが開いて中から人が出てくる 「お待たせ響さん。お迎えありがと!」 「ううん。ちょうど近くにいたから。 さっ、乗って」 響さんはわざわざ車から降りて助手席のドアを開けると、美風を車へスムーズに誘導する エスコートまで完璧だよ、響さん 車に乗る直前、美風はおかしな視線を感じた気がしたが、気のせいだろうと思い、車に乗り込んだ

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