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第27話

何も、やる気が起きない あれからだらだらとスマホをいじり、SNSを漁っては、とかれこれ1時間はこうしている 太陽が傾いてきて日が窓から差し込んで、ゆっくり部屋を照らしていく ぼーっとその様子見ていたその時、美風のスマホに通知音がなった 誰かからメールが来たようだ 内容を見てみると知り合ってそこそこのセフレからゲイバーに行くけど、来てみてはどうか。という誘いのメッセージだった そうだ、最近新しいバーが開くと言う話を聞いていたが、どうやらそのバーのことのようだ 確かに、気分転換にはちょうどいいかも 美風はそう思い、急いで支度を始めた 可愛らしく少し露出がある服と、もちろんエッチな下着も忘れずに。 少しやり過ぎに思えるくらいの服装の方が、美風の華奢な体と、ロングウルフの髪型によくマッチしていた 「よし、行ってきます!」 準備が終わり、家を出る頃には日が暮れ始め、美風の影が長く伸びていた 「ここか〜、めっちゃ目立ってる」 美風がたどり着いたバーは人通りの多い道でギラギラと輝いていた オープンしたてだと言うのにぞくぞくと人が吸い込まれていく その中には女性の姿も多くあった ゲイバーと聞いていたが、どうやら性別関係なく人気があるらしい 美風はそれを見て胸が高鳴り、わくわくしながら人が集まるバーに入って行った 「…ひろい」 扉をくぐって直ぐに大きなホールに出る 天井は高く、どうやら二階もあるらしい上からぶら下がるミラーボールが薄暗いホールをチカチカと照らしていた なんだかバーというよりクラブみたいだ さらにホールのど真ん中にはステージのようなものがあり、ちょうどパフォーマンス中なのか美風ほど華奢な若い男の子が歌って踊って歓声を浴びていた しばらくその様子を見ていたが、美風の来るタイミングが遅かったのだろう パフォーマンスは終盤に入り、直ぐに終わってしまった もう少し彼の歌とダンスを見ていたかったな 周りの拍手にわあせて美風も拍手を送る ステージの彼はぺこりと頭を下げ、直ぐにステージ脇に捌けて行ってしまった その時彼と一瞬目が合ったような気がしたが、きっと気のせいだろう パフォーマンスを見終わると皆んな一斉に捌け、先程の騒がしさが一変し静寂なホールにシックなミュージックが流れ始めた なるほど。雰囲気はバーの感じに似ている そう思いながら美風はラウンジに向かい、お酒を頼みに行こうとすると後ろから聞いた事のある声がした 「あ、ミカちゃんじゃん!来てくれたんだね」 振り向くと茶髪のチャラそうな男の人が美風に向かって手を振っていた そう、この人だ。今日美風をここに誘ってくれたセフレの1人 名前は…そうだ 「りょうすけさん久しぶり〜。ここめっちゃお洒落だね」 「やっと俺の名前覚えたかよ。最近見なかったから来てくれないかと思った」 「えー?合わなかっただけでしょ。それに僕、人気者だし」 「それもそうか」 あははっと笑うりょうすけさんの手にはもうグラスが握られていてあともう少しで飲み終わりそうだった どうやら僕が来る前から飲んでいたらしい 心なしかシラフの時よりテンションも高めだ 「じゃミカちゃんに会えたことだし、俺はもー行くねっ。相手見つかんなかったら今晩は俺と過ごしてよ」 「見つかんなかったらね。そのためにちゃんとお金とっといてよ〜」 「わかったわかった。じゃーねーミカちゃん。また後で!」 そう言ってりょうすけさんは手を振ってホールの人混みの中に消えていった なんだか嵐みたいな人だ 美風も早くお酒が飲みたい そうしてラウンジに急いだ

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